2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530031
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山元 一 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (10222382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 美夏 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80200921)
松本 英実 青山学院大学, 法学部, 教授 (50303102)
高山 佳奈子 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30251432)
齊藤 笑美子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (20456297) [Withdrawn]
武田 芳樹 山梨学院大学, 法務研究科, 准教授 (00546327)
石塚 智佐 城西国際大学, 経営情報学部, 助教 (30614705)
北島 周作 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (00515083)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 憲法 / グローバル化 / 公法と私法 / 憲法と国際法 / 近代主権国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究の結果として,グローバル化社会という文脈を意識化した上で,以下の研究成果を得ることができた。各法学分野と憲法との関連について,まず民事法分野においては,憲法適合的な解釈の名の下に積極的に,契約当事者の意思を解釈することの問題性が解明された。次に刑事法分野においては,児童保護や国家体制変革期における「移行期正義」の検討や刑罰抑制的な方向性での国際人権水準の向上と憲法解釈との架橋の可能性が検討された。そして国際法分野においては,個人の権利義務に直接かかわる国連安保理やICJの決定の国内実施との関連で,憲法解釈への架橋に関わる問題点が検討された。最後に行政法分野では,グローバル化によってもたらされている公的活動の担い手の多元化という問題状況における,「公法規範」の射程の変化という視角からの検討が行われた。さらに比較法学の見地からは,日本法を混合法として捉える視点が提示された。 このような他の法学分野からの問題提起を受けて,憲法では,まず社会経済的秩序と憲法の規制力について改めて検討が行われた。その結果,憲法が保障しようとする価値と実際に法制度が設計される際にモデルとされた社会のあり方の違いから,社会経済領域における憲法の構想が十分に実現されない可能性があることが指摘された。また,憲法の人権法源については,従来のように憲法の最高法規性に拘泥して,トランスナショナルな人権規範を単なる参照規範にとどめることの限界が明らかになりつつあり,このことは最高裁2013年婚外子相続分違憲決定の思考様式と共鳴していることが示された。 このようにしてみてくると,グローバル化という状況の下でこれまで以上に,憲法学は他の法学分野との連携・対話を深めながら,憲法が掲げる価値と法制度を取り巻く意識の違いから,社会問題の淵源を捉え直す必要があることが明らかとなった。
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