2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松原 有里 明治大学, 商学部, 准教授 (30436505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪熊 浩子 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30596416)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 CCCTB スェーデン・ドイツ / 国際研究者交流・ドイツ 租税条約 / 国際情報交換・アメリカ・租税回避 / 国際情報交換・アメリカ・会計基準 / IFRS for SME |
Research Abstract |
平成24年度は、研究の初年度にあたるため、知識や情報のインプットに主力を注いだ。まず夏休みに松原が、ドイツ(ミュンヘン大学および連邦財政裁判所訪問・ニュルンベルク大学およびDATEV訪問・ベルリン税理士会および大手会計事務所訪問・マックスプランク国際私法研究所ハンブルクを訪問)とスェーデン(ストックホルム経済大学およびウプサラ大学を訪問)に出張し、欧州の国際課税(特に企業課税)についての情報収集を行い、現地の研究者および国際税務の実務家と意見交換を行った他、松原が8月にスェーデンのウプサラ大学で「日本の国際的租税回避防止策(CFCルール改正)の動向」について英語でプレゼンテーションをする機会を得た。 松原は、その後9月末から10月始めにかけてアメリカのボストンで行われたInternational Fiscal Association(IFA)の年次大会に出席する機会を得て、米大陸(含む南米)および欧州大陸の実務家や研究者から米国の国際課税の現状および国際的租税回避への対応策をヒアリングする機会を得た。 次いで、日本国内では、10月末に開催された、税務会計研究学会の自由論題において、松原と猪熊が共同で「国境を越えた法人税と会計のルール」と題して、欧州域内での会計ルールと連結法人の課税についての研究発表を行ない、質疑応答に対応した。現在、学会誌にその要約を執筆中である。 その後、11月始めには、ドイツのミュンヘン大学から租税条約の専門家であるモーリス・レーナー教授を日本に招聘し、明治大学で講演会「欧州租税法の行方~ドイツの租税条約ポリシー~」を開催し、その際、松原が通訳(ドイツ語)をつとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、主たる研究対象を欧州に絞り、EU内での会計基準と法人課税の共通化の深度について比較研究することに主眼を置いた。その結果、EUでは会計基準の統合の動きの早さと比較して、加盟国間の直接税とくに法人税制統合の動きはまだまだ発展途上にあるといえ、むしろ、納税者(多国籍企業)側の低課税国への資本集中・本社移転などの動きに関連して、やや場当たり的かつパッチワーク的にEU加盟国各国の税制が改正されているという現状が明らかになった。 そのため、各国の現行の法人課税に関しては、各国の立法府(議会)の直接税分野におけるEU協調(harmonization)への動きの停滞に対して、司法府(裁判所)がこれに先行してけん制する判例をだしている傾向がみられ、法人税に関するEU指令案が実現しない分、欧州裁判所や各国の最高裁判所など司法府の役割が重要になってきているという現状がわかった。 さらに、会計基準についても、EU加盟国が必ずしも全面的にIFRSに転換するという訳ではなく、税務の問題や完全にドメスティックな中小企業の存在から各国とも国内独自の会計基準(税務基準)を放棄するわけにもいかず、その結果、IFRS for SMEと呼ばれる中小企業会計基準が独自形成されるなど、複線化がすすみ、後者に関しては、今後の動向が注目されていることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度発表した国内学会での研究成果をまとめる他、ドイツのケルン大学から税務会計の専門家を日本に招聘して、(1)国際財務報告基準(IFRS)のドイツ国内法(会社法および法人税法)への受容および(2)欧州共通法人課税標準(CCCTB)の動向について、明治大学と東北大学で研究者および学生向けにそれぞれ講演をしていただく予定である。さらに、長期の休暇を利用して、英国で法人課税の研究者および実務家と会い、昨年度はカバーしきれなかった英国の税制改正および法人課税関連の租税判例(含む審判所の裁決)の最新動向を調査する予定である。さらに、独自の連結納税制度および会計基準を有する北欧を再訪し、今回はデンマークを中心にドイツ・イギリスとの差異を調査する予定である。 さらに余裕があれば、近隣諸国国であるアジア・オセアニアの国々の動向についても研究対象として順次調査したいと考えている。これに関しては、IMFアジア太平洋事務所およびマレーシアにあるIBFDアジアセンターの国際租税の専門家とも協力して行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成25年度)は、ケルン大学の研究者(税務会計のノーベルト・ヘルツィヒ教授)のわが国への招聘費用(講演会を明治大学と東北大学で開催予定)が必要なほか、松原は、デンマークのコペンハーゲンで開催される国際租税協会(International Fiscal Accosiation)の年次総会への参加費および滞在費に使用する予定である。また、猪熊・松原の双方とも、今年度は、英国ケンブリッジ大学およびロンドン大学への調査目的での出張を計画しており、そのための費用を計上したいと考えている。さらに、松原はIBFDマレーシアのアジアセンターおよびシンガポールへの出張も計画しており、その際にアジア・オセアニア地域における会計基準と法人税の関係についても現地の専門家等からヒアリングを行う予定である。
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Research Products
(4 results)