2014 Fiscal Year Annual Research Report
渉外的法律関係の規律手法としての「承認」の総合的研究
Project/Area Number |
24530046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50263059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 外国判決の承認 / EU法 / 欧州人権条約 / 人権 / 国際私法 |
Outline of Annual Research Achievements |
渉外的な私法上の法律関係を規律する手段としては、準拠法選択と外国判決の承認という、大きく分けて2つの手法が存在する。本研究は渉外的法律関係の規律手段としての「承認」に着目して、その概念の整理を行った。その際には、外国の決定(主として裁判所の判決)の承認と、外国で決定がない単なる事実関係(状況)の承認とに大きく2つに分けて、分析を進めた。 外国の決定(主として裁判所の判決)の承認に関しては、実質的再審査の禁止が求められることがポイントであり、その根拠について検討を進めたところ、手続保障がある手続の結果なされた外国国家機関による決定の権威という側面のみならず、そのような決定の権威が妥当し、尊重されることについての当事者の正当な期待という側面もあることが明らかとされた。 外国で決定がない単なる事実関係(状況)の承認に関しては、近時の、EUにおける欧州市民権を根拠とする、他の構成国での氏名変更の尊重に関する裁判例や、欧州人権裁判所における、欧州人権条約を根拠とする、本来承認されない外国での身分変動の尊重に関する裁判例の検討を行った。これらについての検討から、これらの事例の共通点として以下の点が明らかになった。EU市民権や欧州人権条約の家族生活の尊重を受ける権利という、国際私法外部の要請から、「承認」が求められていること、法廷地(広義の)国際私法による評価という、古典的な双方主義のアプローチの原則によれば有効と認められない、外国での一方的な身分変動についての「承認」であり例外的な一方主義の介入であること、上記のような外部からの要請を認める根拠として、当事者の正当な期待という面があり、その点で、外国で決定がある場合のその承認ともつながりがあることなどである。 最終年度においては、以上のうちの後半部分を中心に検討を行い、全体の総括を行った。
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