2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530047
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長田 真里 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10314436)
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Keywords | 家事調停 / 子の奪取条約 |
Research Abstract |
平成25年度は、日本が子の奪取条約加盟手続をすすめ、国内法の整備がほぼ整う時期であったため、当初アメリカ等で行う予定としていた調査の方針を変え、国内法の整備や国内における対応状況への取り組み、並びに現在日本国内で行われている家事調停制度の問題点を主として研究の対象とした。また、前年度までの調査では抜けていたフランスでのメディエーション機関の調査も追加して行うとともに、台湾での家事事件にかかる専門家の意見を聴取する機会も得られた。その結果、以下の問題点が現在の日本での喫緊の課題であるとの知見を得た。(1)調停者の育成制度や調停者適格者の要件が整備されていないこと。現在まで調査することのできた多くの国では調停者の育成制度は国全体で統一されており、かつ、調停者として働くための要件も国単位で整備されているのにたいして、日本ではそのような制度は一切存在しない。この状況の中で、日本で下された調停の結果を諸外国で承認してもらうのはかなりの困難を伴うものと考えられる。(2)日本の国内実施法では友好的解決の重要性についての認識が不足していること。1980年に子の奪取条約が成立した時点と異なり、現在では条約加盟国において友好的解決(=メディエーション)の重要性が認識され、条約事務局においてもかかる認識は共有されているにもかかわらず、日本の条約の国内実施法においてはその点に対する配慮がほとんど見られない。他方、近年改正された家事事件手続法においても調停で得られた当事者の合意を国際的に執行可能とするのに必要な規定は存在しておらず、逆もまたしかりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、日本のハーグ子の奪取条約への加盟が整ったことから、当初予定した調査対象であったアメリカ等についての調査は進めることができなかったが、その反面、国内法上の問題についてかなり知見を広めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の調査対象としていたアメリカ、カナダなどの北米諸国における現状の調査を今年度の課題としたい。また、同時に、オーストラリアなど当初予定していなかった国についても調査の必要性を感じつつあり、これらの国についても知見を広めたいと考えている。
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Research Products
(4 results)