2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530047
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長田 真里 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10314436)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 国際家事調停 / ハーグ子の奪取条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は引き続き、国際家事調停制度の進展が目覚ましいヨーロッパを中心に、特にハーグ子奪取条約加盟各国における現状の文献研究を進める一方で、ヨーロッパでハーグ子奪取条約調停を主として担っている複数の機関での聞き取り調査や実務家の日本への招聘などを通じて、調停で得られた合意の履行確保の困難さについて理解を深めた。また、アメリカでも家事調停を中心に聞き取り調査を行った。 まず、ヨーロッパを中心とした研究の結果、ヨーロッパにおいても国際家事調停制度における合意の履行確保が非常に難しく、裁判所による協力制度やハーグ親責任条約を基にしたブリュッセルIIbis規則などの導入を通じて、効果的に合意の履行確保を進められる制度作りを進めつつあるところであることが分かった。他方、アメリカ調査の結果、アメリカでは国際家事調停が未だハーグ子奪取条約の解決枠組みとして利用が促進されているとは言えない状況にあること、そのため、履行確保の問題は潜在的な問題としては意識されているものの、具体的な問題として意識をされるには至っていないことが確認できた。以上の各国に加え、カナダ、オーストラリア等における状況についても文献による調査を進め、かなりの知見を得た。 これらの調査から得られた示唆として、まず、裁判所による調停合意に対する執行力付与制度を早急に組み立てなければならない必然性があげられる。ヨーロッパで国際家事調停制度が進みつつあるのも、裁判所での合意への執行力確保制度が機能しつつあるためであり、この制度が相互的に機能していない日本との間では国際家事調停を始めることすらできない可能性がある。さらに、専門家養成の必要性である。この点は本研究とは直接関係しないものではあるが、国際家事調停制度について研究を進めるに従い、専門家による調停の重要性を痛感するに至った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、過年度で得られた知識を基に、集中的に文献に当たると同時に聞き取り調査等を行うことにより、課題の明確化を深めることができた。さらに、この研究の課題について、研究会やシンポジウムで議論を重ねることにより、一定の解決の方向性がみえてきたこと、およびその重要性について共有をすることにより多角的な議論の視点を得ることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように、現時点では国際家事調停における合意の国際的な履行確保について、裁判所による協力体制の構築が不可欠であるようにも思われる。平成27年度はこの点について、既存の法や制度にかかる解釈論から何らかの解決を導くことができないか、ということを中心に研究を進めたい。 また、国際家事調停の合意の国際的な履行確保については、他国の国際家事調停に携わる実務家や研究者から日本における国際家事調停制度の信頼を勝ち得ることがまず先決であるとも考えられ、そのための専門家養成について、そのあり方を考えたい。
|
Research Products
(4 results)