2012 Fiscal Year Research-status Report
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24530049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
韓 相煕 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30380653)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際法学 / 日本の国際法学 / 受容 / 万国公法 / 東アジア |
Research Abstract |
平成24年度の研究目標は「近代東アジア国際法学の形成とそれに対する日本の影響」であり、その具体的な研究計画として取りあげた三点について以下のような研究実績があった。一、「近代日本における国際法学の形成過程」:1865年から1910年まで日本で出版された約150冊の著作を収集・分析することによって、近代日本国際法学の形成過程及びその特徴を分析した。また、未刊行のためその内容の把握が困難であった、呉碩三郎・鄭右十郎の『和解万国公法』(10冊、1868)をようやく手に入れることができた。二、「近代中国における日本国際法学の初期受容」:『万国公法釈例』(1898)・『公法通義』(1898)など中国人によって書かれた著作を分析すると同時に、北京の中国国家図書館(10月)と上海図書館(11月)から19世紀~20世紀前半の中国で出版された国際法著作を収集・分析し、これらの著作に対する日本国際法学の影響を把握した。三、「近代韓国における日本国際法学の初期受容」:19世紀後半来日した朝鮮人の記録、『漢城旬報』の分析、兪吉濬と福沢諭吉との関わりに関する資料調査及び分析を行った。 又、今年は、以下のような二つの報告と一つの英語論文の執筆を行った。まず、報告の一つは、2012年6月21日、韓国の翰林大学において「近代東アジアにおける国際法学の受容と奥地思考」というタイトルで、他の一つは、2012年8月30日、九州大学で開かれた国際シンポジウム(日中韓)において「近代東アジアにおける「領域概念」の受容」というタイトルで行った。二つとも、中国と韓国における日本国際法学の受容と影響に重点を置いている。また、日本の最も著名な英語雑誌(国際法)に、「Yukichi Fukuzawa and International Law」というタイトルで論文を提出し、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全ての研究が、当初の計画以上に進展していると思われる。もともとの計画によれば、平成24年度の研究目標は、「近代東アジア国際法学の形成とそれに対する日本の影響」であり、その具体的な研究計画として、「近代日本における国際法学の形成過程」、「近代中国における日本国際法学の初期受容」、「近代韓国における日本国際法学の初期受容」をあげていたが、上記の「研究実績の概要」で説明したように、これら三つの研究計画は全て順調に進展している。実は、去年6月、10月、11月の現地資料調査と分析(韓国、中国)の段階で、平成24年度の研究目標達成は問題ないと判断した。それ故、12月には、もともと平成25年度の予定であったベトナム現地での資料調査を約2週間にわたって幅広く行った。また、福沢諭吉に関する研究も、もともと計画したよりも順調に進んで、上記したジャーナルに採択されるかどうかは別として、一応一つの報告書としては既に出来上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年の研究が計画とおり順調に進んだので、平成25年度の研究においては、その研究の重点を「19世紀」から「20世紀」に移る。この「20世紀」は、第二次世界大戦を軸として、「戦間期」(1910年代~1940年代)と「冷戦時期」(1950年代~1980年代)に分けて、この期間中に日本、中国、韓国で出版された国際法著作の比較分析とこれらの著作に対する日本国際法学の影響を分析する予定である。 中国の場合は、特に、中国国際法学のゴッドファーザーとも呼ばれているZhou Geng-shengの『国際法学』(1929)などの諸著作、1950・1960年代の中国における日本国際法学と旧ソ連国際法学の衝突過程などを中心に、20世紀初期から冷戦時期までの中国国際法学に対する日本国際法学の影響を分析したい。 また、韓国については、まず1910年から1945年の間の韓国(日本の「植民地」時期)において国際法研究が行われた可能性があるという前提でその端緒を追跡すると同時に、1945年「解放」以降から冷戦初期までの期間中に韓国で出版された国際法著作(例えば、解放以後の最初の国際法教科書である朴観淑の『国際法要論』(1949)など)に対する日本国際法学の影響、そして接続水域・大陸棚・排他的経済水域・深海底など韓国の海洋法用語に対する日本の影響を分析する予定である。 最後に、以上のような計画に加えて、台湾、北朝鮮、そしてベトナムで出版された国際法著作の収集と分析も積極的に行いたい。台湾の場合は、雷崧生など1950年代~70年代の著作を中心に分析を行う予定である。ベトナムの場合は、去年12月ベトナムで収集した著作を分析すると同時に、必要に応じて再び現地調査を行うつもりである。また、北朝鮮については、韓国及び中国を通じて最大限の資料収集を行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の最も重要な方法論の一つは、「東アジア諸国」で出版された近代及び現代国際法教科書の収集とその分析である。本研究でいう「東アジア」には、日本だけでなく、中国、台湾、韓国、北朝鮮、ベトナムを想定しているが、その理由は、これらの諸国が同じく「漢字文化圏」であり、日本国際法学の影響を確かに受けていることが既に確認されたからである。 但し、これらの国際法著作が中国、韓国、台湾、北朝鮮、ベトナムで出版されており、その殆どが直接現地に行って一つ一つ確認しながら収集するしかない資料なので、今年も去年の場合と同じく、研究費の殆どが「現地出張」と「資料収集」のために使われると思われる。 現地出張の必要性が、もともと予想したよりも多くなっているので、人件費・謝金や物品費から最大限節約し、それを現地出張と資料収集のために使いたい。今年も、残念ながら北朝鮮には行けないが、それ以外の中国、韓国、台湾、ベトナムでは現地資料調査を行って、研究費が許すかぎり最大限の資料を集めながら分析を続けたい。
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