2013 Fiscal Year Research-status Report
国際法における個人責任の複合性と限定性―システム・クリミナリティの動態
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24530051
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古谷 修一 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50209194)
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Keywords | 個人責任 / 国際刑事裁判所 |
Research Abstract |
国家責任体系と刑法の個人責任体系が融合・抵触することにより、両者の抵触を回避する制度が現出し、これによって国際法における個人責任は、刑法の個人責任体系よりも限定的な内容となると想定する「限定構造モデル」に即して、国際刑事手続と国内手続における特徴をそれぞれ検討するとともに、国際手続と国内手続が交錯する局面を検討した。 具体的には、(1)公的資格と責任の関係や国内法上の合法措置・上官命令の抗弁など、国際刑事裁判における違法性阻却の要素となりうる点を取り上げ、ICCやICTY/ICTRなどの国際刑事裁判所の判例、関連する国内判例などを素材として、個人責任の実体法的な内容が限定・縮小されている点を考察した。 また、(2)外交免除や主権免除(国家元首等の無答責)など、主権国家を基盤とする伝統的な国際法の原則が、国内手続における個人責任の実体法的・手続法的な側面に与える効果について検討した。とりわけ、Institut de Droit Internationalが2009年ナポリ会期で採択した決議の審議過程と国際法委員会(ILC)が“Immunity of State Officials from Foreign Criminal Jurisdiction”のトピックのもので審議している内容とを比較検討し、両者のスタンスの相違点を明らかにしたうえで、国際法における個人責任の限定性の特徴を抽出した。 さらに、(3)国際刑事裁判所(ICC)に対して国家が容疑者・被告人の移送を行う際に、ICCに対する協力義務との関係で、公的資格に基づく免除がどのように理解されるのか、スーダン・バシール大統領の逮捕状執行に関するPre-Trail Chamberの決定などを素材として検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に検討することを計画していた事項については、関連する判例・文献の分析をほぼ完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究を踏まえ、システム・クリミナリティの発想が、国際法における個人責任の概念にどのような影響を与えているのか、判例等の内容を整理するとともに、その理論的な検討に入る。そのうえで、まず7月を目途に、国家元首等の免除が個人責任論との関係で変質しつつあることについて、国際裁判と国内裁判に通底する観点から日本語論文にまとめる。さらに、個人責任論がシステム・クリミナリティの観点から、集団責任的な内実に変質しつつあり、それが国家責任の「刑事化」とも呼べる現象を引き起こしている点について、明年1月を目途に英語論文としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の研究内容では、関連書籍・資料の購入支出が予定していたほどの金額とならなかったため、26年度への繰り越しとなった。 26年度は、上記の推進方策に沿った研究を進めるうえで必要な文献・資料を整備するとともに、外交免除や主権免除(国家元首等の無答責)に関する新たな判決が次々と出されているアメリカ合衆国に出張し、関連資料を収集する。
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Research Products
(3 results)