2013 Fiscal Year Research-status Report
電気通信産業における事業法規制と競争法規制の相互作用
Project/Area Number |
24530059
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 邦宣 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00305674)
|
Keywords | 独占禁止法 / 事業法 |
Research Abstract |
日米欧を問わず、電気通信産業における事業法と競争法との関係について、関心が高まっている。同問題につき、米国最高裁と欧州司法裁判所は、全く異なる判断を下した。米国最高裁は、事業法が存在する場面において、競争法の役割は小さいとする。欧州司法裁判所は、事業法が存在する場面においても、競争法の役割は大きいとする。両判決が結論を分けた大きな理由は、事業法規制に対する信頼の相違であった。本研究は、事業法規制に対する信頼が競争法の適用方法に影響を及ぼすとの問題関心の下、①競争法違反行為における事業法規制の作用、②競争法違反行為を抑制するための実効的な事業法規制のあり方を研究することを目的とする。 今年度は、①の問題について、反トラスト法の謙抑的な規制の源流となっているTown of Concord事件判決について、現在の、最高裁判事であるBreyerの考えを追った。そこで確認された点は、Town of Concord事件判決が、反トラスト法の適用を画一的に制限するものではなかったという点である。linkLine事件最高裁判決において、Breyer判事は、同意意見を執筆している。そこでは、自身によるTown of Concord事件判決を引用して、「競争制限効果を抑制し解消するための事業法規制が存在する場合には、反トラスト法適用の費用は便益よりも大きくなりそうである」との考えを示している。これは反トラスト法の画一的な適用除外を支持する多数説との比較において、理解することが可能である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一定の成果を公表することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
26年度は、24年度および25年度における米国法およびEU法の研究を通じて、過剰でも過少でもない適切な事業法規制のあり方を検討した後に、次の2点を解明する。 第一に、競争法違反行為における事業法規制の作用である。競争法規制の役割を小さくする、実効的な事業法規制はいかなるものか。ここでは、①投資回収費用を認めるためのアクセス料金の設定が競争者排除を誘引するといった、内在的な事業法の失敗問題、および②事業法規制を利用した競争者排除行為という、外在的な事業法の失敗問題に分けた研究を行なう。②については、など、経済学的知見を利用した最新の研究を取り入れた研究を行なう。 第二に、具体的事件ないし具体的政策への示唆の獲得である。NTT東日本事件といった具体的事件、光の道構想といった具体的政策に、「事業法規制が実効的であれば、競争法規制の役割は小さい」との欧米におけるパラダイム転換はどのような解を与えるのか。同解明を本研究の最終的な目的とした上で、3年間の研究成果を論文にまとめ公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
出版予定の洋書について、その出版が延期となったため。 繰り越し分は同洋書の購入に利用した上で、今年度の研究を計画通りにを遂行することにする。
|
Research Products
(2 results)