2012 Fiscal Year Research-status Report
低所得労働者に対する所得保障の可能性と社会保障法体系の再構築
Project/Area Number |
24530060
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笠木 映里 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30361455)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | フランス |
Research Abstract |
本年は、テーマである低所得労働者について多角的に検討をし、まずはその実態をつかむことに集中した。研究計画にとってもっとも有用であったのは、大阪府西成地区において行った現地調査であった。ここでは、いかに低所得の労働であっても、単に生活保護給付を受けるよりも当事者にとって意義があり、また精神的満足に資するといった専門家の声を聞くことができ、今後の研究の方向性について重要な示唆を得ることができた。 また、賃金とは少し離れるが労働者の健康・安全についてフランスで調査を行い、雇用の不安定が労働者の精神的健康に及ぼす影響について、外国における動向を知ることができた。 以上の二つの柱となる出張に加え、文献調査では、フランスを中心に、不安定な雇用しかもたない労働者の所得保障としていかなるものが考え得るか、あるいは考えるべきか、という問題と、いかに低所得・労働条件の低い労働であっても、雇用をもつ(失業自体にない)ということ自体に意味を見いだし、そうした状況に失業者を誘導することに意味があるというべきか否か、という、2つの論点を改めて確認することができた。西成地区の調査からは、働くことを求めないベーシックインカムのような制度に一定の限界があることが示唆されているようにも思われる。他方で、フランスで雇用と結びつけた貧困問題対策の制度であるRSAにおいて、就労促進の効果が期待されたレベルまで達しているか否かは、さらに議論の必要な問題であることも明らかになった。 来年度は、以上のような調査を前提にして、より理論的な課題へと関心を移していきたいと考えている。特に、低所得労働者にとっての家族の役割や、低所得をそのまま引き継ぐ形になる老齢年金の制度設計の正当性(あるいはそれ以外の形の老後保障、例えばフランスにおける拠出最低年金等)等について、理論的な考察を、特にフランス法を参考にしつつ進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低所得労働者、不安定な生活をおくる労働者の実態に関する理解は進んだ。他方で、理論的な考察、比較法的考察は、不十分な状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
低所得労働者にとっての家族の役割や、低所得をそのまま引き継ぐ形になる老齢年金の制度設計の正当性(あるいはそれ以外の形の老後保障、例えばフランスにおける拠出最低年金等)等について、理論的な検討を加える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フランス法の文献を中心とした文献による研究を行う。
|