2012 Fiscal Year Research-status Report
脆弱な消費者-子どもを対象とする顧客誘引に対する規制のあり方をめぐる競争法的考察
Project/Area Number |
24530061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
岩本 諭 佐賀大学, その他部局等, 教授 (00284604)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 公正競争 |
Research Abstract |
本研究は、子どもをターゲットとした顧客誘引をめぐる競争と取引に対する規制のあり方を考察するものであり、初年度は、①EU、ドイツにおいて「脆弱な消費者」と位置付けられる子どもの「消費者性」、②子どもの消費行動、及び子どもの購入要求に接した親その他の成人の購買活動の実態を明らかにした上で、③日本における子どもを対象とする顧客誘引に対する規制と制度のあり方を考察することを研究計画の柱としていた。 ①については、当初の計画のとおり、ドイツ及びEUにおける関係法制度(ドイツUWG、EU費者取引に関する各指令等)、学説等の確認を行い、子どもの消費者性についての法制度上の配慮、子どもの年齢・学年に応じた消費者性を踏まえた法的保護についての研究成果を把握した。 他方、独占禁止法などの自由競争確保の法制度では、消費者特性を踏まえた消費者利益の確保についての法的配慮はなく、かかる観点は、ドイツUWGやEU消費者取引指令などの「公正競争法」の保護法益であることが把握された。その意味において、広義の競争法を構成する「自由競争の法制度」と「公正競争の法制度」の目的・役割、保護法益、法の運用体制等における相違と交錯領域についての基本的視点が得られた。 ②については、子どもの消費者特性を年齢または学年別で把握することを目的として、幼・小・中・高校の園児、生徒を対象としたアンケート調査を行うことを予定していた。アンケート書式の準備は完了したが、対象としていた園、学校との間での実施時期について協議していたが、最終的に次年度の適切な時期での実施という結果になった。 ③については、所属学会の一つである日本消費者教育学会の全国大会に参加し知見を得たほか、大分県技術・家庭科教育研究大会での基調講演を行い、その後のパネルディスカッションでの質疑応答を通して、生徒の消費者特性について教育現場の認識を把握する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度当初の研究計画は、①EU、ドイツにおいて「脆弱な消費者」と位置付けられる子どもの「消費者性」、②-i)子どもの消費行動、及び子どもの購入要求に接した親その他の成人の購買活動の実態、②-ii)子どもを対象とするマーケティング活動の実態を明らかにした上で、③日本における子どもを対象とする顧客誘引に対するルール形成、規制制度のあり方を考察すること、である。 ②については、アンケート調査による実態把握を予定していたが、前記のとおり、調査対象である本研究者所属機関の附属学校園(幼、小、中)と県内高校における調査受入の時期等について、平成24年度は困難であるとの回答があったことから、次年度(平成25年度)の適切な時期に実施することとなったため、この研究計画は次年度での実施に修正することとなった。 ①については、主に文献等を中心に調査を進めており、その成果の一部を学術論文として出版物掲載した。 ③については、消費者教育の観点から、本研究課題について考察する機会を頂き、日本消費者教育学会の複数の会員からの依頼により、平成24年8月17日に大分市で開催される大分県技術・家庭科教育研究会(会場・大分銀行ドーム)での基調講演を行うとともに、その後のパネルディスカッションにおいて現職教員との質疑をとおして子どもの消費者性についての貴重な知見を得ることができた(なお、この基調講演の内容等については、参加者であった日本消費者教育学会所属の研究者により、同年10月の日本消費者教育学会全国大会の個別報告で引用されていた)。 以上の状況から、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究申請時の研究計画のとおり(前記・アンケート調査に係る部分を除く)、本研究を推進する予定である。 2年目にあたる平成25年度は、日本における子どもをターゲットとした産業・事業分野に関する情報を整理し、影響力ある商品・サービスを軸に、その競争と取引の現状を把握する。また、引き続き、この研究テーマにおいて先行・蓄積のあるドイツ・EUの制度の規制の状況について、文献調査を継続するとともに、現地調査を行うことを予定している。 こうした2年目の研究計画に基づいて、最終年度に日本における子どもの消費者性を踏まえた制度と規制のあり方についての成果をまとめることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前記のとおり、初年度(平成24年度)に予定していた幼・小・中・高校におけるアンケート調査(園児と生徒を対象とする)については、園・学校との調整の結果、次年度(平成25年度)での実施に計画を修正することとなった。このため、初年度に計上していたアンケート実施に係る経費について(25~30万円)については、平成25年度に繰りすこととした。 なお、このアンケート調査については、相手先である園や学校の行事等に最大限配慮し実施することは当然であるが、本研究者にとっては知ることのできない園や学校における様々な不測の状況により、実施時期のずれ込み等や、対象園児・生徒数の確保について修正が求められることがある。こうした事態に対しては、相手方との十分な事前協議と最大限の配慮により、適切な調査の遂行に臨むものとする。
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