2013 Fiscal Year Research-status Report
脆弱な消費者-子どもを対象とする顧客誘引に対する規制のあり方をめぐる競争法的考察
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24530061
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
岩本 諭 佐賀大学, その他部局等, 理事 (00284604)
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Keywords | 公正競争 / 景品表示法 / 子ども / 消費者 |
Research Abstract |
本年度は、当初の「研究の目的」「研究実施計画」ならびに平成24年度「研究実施報告書」を踏まえた研究を実施した。「研究の目的」記載の②-i)子どもの消費行動、及び②-ii)子どもを対象とするマーケティング活動の実態について、日本においては金融広報中央委員会による5年毎の調査がなされているが、ドイツ・EUにおいては、KidsConsumer(Kids Verbraucher)の消費動向という観点から公的機関による調査が実施され年次報告のかたちで公開されているが、かかる子どもである消費者が市場においては無視できない購買力(Kaufkraft)である実態が確認された。 子どもに対する顧客誘引規制のあり方を考察する場合、包括的なルール設定と、問題と思われる商品・事業分野・メディア媒体について個々にメールを設定するアプローチがあることが、ドイツ不正競争防止法及びEU指令に関する学説・実務の考え方の整理から判明した。かかるアプローチは、日本においては「子ども=消費者」という観点からの立法要請が研究が見られない中で、次年度において日本のあり方を検討していく際の重要な手がかりとなる。かかる規制のあり方を日本において検討することが喫緊の課題であることについて、全国消費者大会(平成26年3月15日)の基調講演において紹介した。 また、本年度は、日本における百貨店・レストランの偽装表示が社会問題化したことを受けて、景品表示法改正議論が行われた。このため、顧客誘引に対する法制度のあり方について一年前倒しで検討を開始することとし、平成25年10月の東京経済法研究会では景品表示法の制度変遷と規制制度の問題点について、また平成26年2月に経済法判例研究会では「秋田書店事件(平成25年8月消費者庁措置命令)」を取り上げ、景品規制と表示規制の制度上の問題点に関する研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の2年目の計画は、子どもの消費と事業活動(マーケティング)との関係性を明らかにし、日本における規制のあり方の考察(最終年度の計画)に必要な実態を把握することを主眼とするものであった。前記・実績報告で述べたドイツ・EUにおける子どもの購買力についての報告書、EU各国の立法・規制の状況(子ども向けチャンネルにおけるジャンクフードCM規制、子どもに直接購入を呼び掛ける広告の禁止、等)が文献等により把握された。日本ではごく一部の業界の自主規制以外に法令等の規制は存在しないことが判明した。また、次年度に予定していた法制度の検討が、内閣府「消費者教育基本計画」の策定、景品表示法の改正等の動向を契機として、一年前倒しで取り組むことが必要であるとの認識から、顧客誘引規制に関する独占禁止法と景品表示法の関係性、それぞれの守備・適用範囲をめぐる基本的事項についての検討を開始し、二つの研究会報告を実施することができた。さらに、本研究テーマの概要をまとめる機会を確保することができた(この成果は平成26年5月締切の「日本消費者教育学会・消費者教育30年の歩み」に所収される予定)。また、「子ども=脆弱な消費者」としての認識の重要性については、共著「消費者市民社会の構築と消費者教育」(平成25年7月、晃洋書房)において記す機会を得た。 なお本年度に実施を予定していた所属機関附属学校園(幼・小・中)における子ども・保護者を対象とした消費行動調査は、学校園の諸事情から、再度学校園長との協議により時期を決定することとし、平成26年度前学期に実施する予定となったこと(なお、大学生を対象とする調査は実施した。)、ドイツ等での実態調査が本研究統括者の本務との関係で日程決定に至らなかったことから文献等による調査を中心とせざるを得なかった。 以上の研究進展状況から、「おおむね順調に進展している」との評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の最終年度に該当することから、当初の研究の目的、研究計画に沿って、本研究の取りまとめ作業を推進する。日本消費者教育学会編「消費者教育30年の歩み」において、本研究の趣旨・目的及び規制制度の概要を明らかにする。 また、主婦連合会から、子どもの消費者性、規制制度の必要性についての講演依頼があることから、本研究の成果の一部を報告する予定である(平成26年6月4日、於・主婦会館)。 また、附属学校園の園児・生徒及び保護者を対象とした実態調査を年度前半に実施する予定である(平成26年6~7月予定)。 ドイツ等での現地ヒアリング調査は、年度当初から日程調整を行っているが、本務の関係上、本年8月以降の時期が有力である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2つの理由がある。第一に、附属学校園(幼、小、中)の園児・生徒及び保護者を対象とした実態調査が、学校園の諸事情により翌年度に変更となったことである。第二に、ドイツ、EU諸国における現地調査が、研究統括者の本務の関係上、日程確保の差支えにより実施が延期されたことである。 附属学校園における実態調査は、平成26年6~7月に実施予定となった。 ドイツ、EU諸国における実地調査は、研究統括者の職務の日程を精査したうえで、平成26年8月以降に可能性となった。
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