2013 Fiscal Year Research-status Report
共同出資会社をめぐる独占禁止法上の適切な対応策についての研究
Project/Area Number |
24530064
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
鈴木 恭蔵 東海大学, 専門職大学院実務法学研究科, 教授 (00317827)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 教之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60098431)
|
Keywords | 共同出資会社 / 独占禁止法 / 問題解消措置 / 排除措置 / 効果・影響 / 競争制限 / 情報共有、 / ライフサイクル |
Research Abstract |
(1)有価証券報告書、日経データベース、TSR企業情報データベースにより、1960年~2012年までの間に設立された我が国での共同出資会社につき、要因別(規模、上場の有無、産業、設立年月別等)、ライフサイクル別に分類した結果、我が国大企業の共同出資会社には、垂直型のものと、特定品目について競争者間の共同生産型のものが相対的に多くみられること、また、ヒアリング調査から、共同出資会社設立につき、規模の利益や、原材料・資材の購入調達と製品の販売における取引先との交渉力強化のためメリットがある反面、出資会社(親企業)間における技術格差については特段の問題が認められなかった。共同出資会社の理論面からの問題点を整理すると、①出資会社が多角化している場合、共同出資会社設立により多市場接触による競争制限効果のおそれが生じやすいこと、②共同出資会社のライフサイクルが短いことから競争当局は競争制限効果を生じないと判断しがちになること、③高集中度産業における共同出資会社は競争制限効果が生じ易く、実証的にも利潤率と正の相関が認められること、④共同出資会社が解消されても、出資会社間の協調関係は持続されること等の問題点ガ指摘されていることが明らかとされた。 (2)EUでは共同出資会社に対する規制の在り方への関心が高まり、共同出資会社への規制の見直しが行われていること、EUで問題とされた共同出資会社の事例数等が明らかとなった。我が国について、独占禁止法上の共同出資会社についての学説を整理し、また、公取委から問題とされた共同出資会社事例(1993~2012年)の「問題解消措置」を分析し、その問題点を明らかにした。 (3)以上の結果は、従来の実証分析、研究等では見られなかった、新しい視点に関するものであるといえよう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)本研究の目的は、我が国の産業・企業の事業再編の一環として、最近多く見られる共同出資会社につき、その設立の契機として協調的行動や寡占的弊害が生じているのではないかという観点から、共同出資会社の実情を把握するとともに、共同出資会社設立に当たって上記弊害を未然に予防するため課される「問題解消措置」や、共同出資会社が独占禁止法違反行為を行った際の「排除措置」 の影響・効果を明らかにし、共同出資会社に対する適切な措置を探るものである。 (2)上記「研究実績の概要」でも明らかなとおり、我が国の共同出資会社の実態を要因(規模別、上場の有無、産業別、設立年月別等)の分析とヒアリング調査により、我が国の共同出資会社の特色等を明らかにすることができた。 (3)他方、共同出資会社をめぐる経済学、独占禁止法上の学説を整理し、競争制限効果の有無とその問題点を明らかにすることができた。 (4)また、共同出資会社をめぐる「問題解消措置」や「排除措置」について、過去の事件例から、「問題解消措置」や「排除措置」の特色と問題点を明らかにすることができた。 (5)以上により、平成25年度については、当初の研究実施計画をおおむね達成することができたものと評価することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)上記のとおり、平成25年度においては我が国の共同出資会社の実情と共同出資会社をめぐる経済学、独占禁止法上の問題点を整理、把握できたが、さらに、共同出資会社の実態把握に努めるため、出資会社間の「情報共有」の内容、共同出資会社のメリット・デメリット、共同出資会社の解消の原因・理由等を明らかにし、我が国の共同出資会社の実態を把握する。 (2)さらに、共同出資会社設立の際の「問題解消措置」や「排除措置」の効果・影響については、上記「研究実績の概要」にもあるとおり、平成25年度までにこれらの「問題解消措置」を把握、分析し、それらの問題点を明らかにすることができたものの、それらの措置による当該業界の競争条件の変化や当該「問題解消措置」の適切性について分析を行うこととする。 (3)上記調査研究の一環として、諸外国との比較のため、米国における共同出資会社の実態、共同出資会社設立に当たっての「問題解消措置」、「排除措置」の内容とその効果・影響等の資料収集、整理を行うとともに、関係機関、大学研究者等との意見交換を行い、共同出資会社に対する適切な対応策の提言を行う。
|