2013 Fiscal Year Research-status Report
刑事過失の認定における実体法と手続法の「連結」の探究
Project/Area Number |
24530071
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇藤 崇 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30252943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 直樹 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10194557)
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Keywords | 刑事要件事実論 / 多段階過失 |
Research Abstract |
1. 本研究は,過失犯における注意義務違反がどのように認定されるかを例にとりながら,起訴・審判の過程において刑事実体法をより適切に実現するために必要となる実体法と手続法の「連結」の条件を検討し,その理論的指針を提示することを目的としている.平成25年度も平成24年度に引続き,これまでの判例,先行研究等を分析し,今後の研究に必要となる枠組みの基礎を確認することに注力するとともに,これまでの研究の成果の一部を示し,諸方面の意見を得るよう努めた. 2.刑事実体法との関係では,これまでの研究によって得られた過失犯の「構造」と「認定」の関係についての知見をもとに,「過失の標準」論を「認定」にいかに投影すべきか検討して,いわゆる「能力区別説」の意味を問い直す作業を進めるとともに,検察官等が「過失」を構成する際に必須となる制約を実体法の立場から総括するという作業を進めている.これらの一連の作業の成果の一つとして,今期は,「過失の『問い方』について」を論文として公表した. 3.刑事手続法との関係では,平成24年度に引続き,過失犯の訴因を中心に刑事要件事実論の検討を進めた.とりわけ,いわゆる訴因の明示・特定に関連して,注意義務の内容および具体的な注意義務違反の記載が明示されなければならない理由等を検討した.その上で,検討作業の成果の一部は,司法研修所刑事裁判教官室における「司法研修セミナー」において,「刑事手続における『要件事実論的思考』について」として口頭報告し,関連する諸論点について意見交換した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度中に達成を予定した検討課題については,文献やインターネット上のデータベース等を通じ,平成24年度と比較してより詳細に議論状況を把握し,その理解を一層深めることができた.また,必要に応じて,刑事法以外についての知見,あるいは国外の知見についても把握しながら研究を進めるという点,また研究代表者・分担者間で定期的かつ継続的に議論を行うという点でも,研究計画に照らし,おおむね順調に進展している. 実務における実状の調査との関連では,必要に応じて,実務家諸氏,とりわけ裁判官,検察官等に対して聞き取りを行う等の方法を予定していたところ,昨年度同様,これらの者も参加する研究会への参加等を通じて,意見交換の機会を得ることができたほか,実体法からのアプローチ,手続法からのアプローチ双方で,論文公表,または司法研修所における刑裁教官セミナーでの報告,その後の意見交換を通じて,より幅広くまたより直接的に今回の研究に対するフィードバックを得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
なお課題として残る問題を引続き検討するとともに,その成果を踏まえて,本研究の完成を目標とする.それぞれほぼ当初計画のとおり,次のような作業を進める. 1.刑事実体法との関係では,平成25年度に引き続き,「過失の標準」論を「認定」にいかに投影すべきか等,他者との関係・取締規則との関係も考慮に入れて検討し,いわゆる「能力区別説」の意味を捉え直す.その上で,最終的には,「予見可能性と回避義務の関係」をも踏まえて,「過失」の構成につき,実体法からの(規範的・政策的な)制約を総括する.とりわけ検察官が訴因を構成するために行う事実の「切り取り」に応じた構成の可変性を認める一方で,実体法的に受入れ可能な全体像(いわば柔構造の過失犯論)を提示することを目指す. 2.刑事手続法との関係では,注意義務違反の明示の意義を中心に,刑事における要件事実論の一端を展開するとともに,事実認定にかかる間接事実に着目し,要件事実論と認定論との関わりについても検討作業を進めたいと考えている. 3. 研究手法はこれまでと基本的に同じであり,関連する諸問題の実態の正確な把握を目的として,研究代表者,研究分担者間の議論を通じて,その認識を共有するよう努めるとともに,検討を進め,その成果についても随時公表していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費,人件費・謝金等につき,若干の支出を見込んでいたが,セミナーでの講演の依頼等,先方の負担により意見交換の機会を得ることができたため,予定したほどには費用がかからなかった. 平成26年度は本研究の完成年度にあたるため,それに向けて図書,物品等が必要となること,また報告,聞き取り取材等のための旅費も必要となることが予想されることから,それらの費用に振り向ける計画でいる.
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Research Products
(3 results)