2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柑本 美和 東海大学, 実務法学研究科, 准教授 (30365689)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精神障害犯罪者 / 精神科医療 / 強制通院制度 |
Research Abstract |
平成24年度は、国内の実体を把握するために、府中刑務所を訪問し、一般刑務所で服役する精神障害犯罪者の処遇状況について調査を行った。平成17年に施行された施設収容処遇法では、刑事施設の長は、必要に応じ収容者等を外部の病院等に通院させ、やむを得ないときは刑事施設外の施設に入院させることもできるとされているが(62条3項)、収容者を外部に連れ出すために人員を割くことは難しく、また、地域の病院が受刑者の受け入れを拒む傾向にあり、規定は存在しても実際に治療を受けさせることは困難な状況にある。府中刑務所は、常勤医として精神科医2名を配し、医療重点施設にも指定されているが、刑務所で行う治療には限界がある。また、精神障害受刑者は、精神障害が引き起こす問題行動のため仮釈放の対象となることは珍しい。そして、未治療のまま満期出所となると、不十分な出所後の生活支援、治療継続支援と相まって、短期間のうちに再犯し刑務所に戻ってくる。我が国では、平成21年度より、地域定着支援センターが各都道府県に設置され、高齢・障害の満期出所者で帰住先のない者に対して、帰住先確保と福祉へのアクセス支援が行われている。しかし、支援対象者の中には精神障害を有する者が多いにもかかわらず、どのように精神科治療継続のための手立てが講じられているのかは明らかでない。 そこで、24年度は、アメリカ合衆国ニューヨーク州を調査対象地域とし、刑務所を出所し地域社会に戻る精神障害者に対して精神医療が継続される制度の研究を行った。ニューヨーク州では、ケンドラーズ法を制定し、裁判所命令によって通院治療が義務付けられる制度を整備し、保護観察の有無にかかわらず、また、強制入院治療の要件を満たさない場合であっても、地域での治療が継続されている。 我が国でも、治療の中断が再犯を引き起こすのだという認識を念頭に、このような制度の構築が必要だと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①国内関係機関の訪問調査について、平成24年度は、府中刑務所に加えて、播磨社会復帰促進センター(兵庫県加古川市…精神疾患・知的障害のある受刑者120名が収容される特化ユニットを有し、社会復帰に向けた専門的な治療を行っている)と、大阪医療刑務所を訪問し、制度運用上の問題点を探るとともに、改善点についての示唆を得たいと考えていた。しかしながら、訪問日程を組んだにもかかわらず、体調を崩し視察がかなわなかった。上記施設については、研究期間中に、何とか訪問の機会を再度設定したいと考えている。 ②さらに、平成24年度は、比較制度研究として、満期出所者に対する精神科医療継続のための仕組みを考察すべく、アメリカ合衆国ニューヨーク州を実地調査したいと考えていた。そのため、ニューヨーク州精神保健局のロイド・セデラー博士に連絡をとり、関係機関の訪問をアレンジして頂き、平成24年10月末に視察調査を行う予定になっていた。しかしながら、ハリケーン・サンディの上陸と重なり、ニューヨーク側から視察受け入れ延期の要請が来たため、訪問を断念せざるを得ず、文献調査にとどまらざるを得なかった。ニューヨーク州への実地調査については、平成25年度中に、ぜひ、再度訪問をアレンジし、関係機関の視察を実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我が国の矯正施設における医療的処遇の実際を可能な限り詳細に研究したいと考えている。訪問研究先としては、北九州医療刑務所をはじめとする医療刑務所のほか、精神的・知的障害のある受刑者を収容している各社会復帰促進センターを考えている。 さらに、満期出所者の帰住先確保・福祉支援を行っている地域定着支援センターでの支援について、数か所のセンターへの訪問調査等を通じて、実態把握に努めたいと考えている。 そして、比較制度研究としては、研究計画調書に記載したイギリス、台湾の制度研究を、文献調査と現地視察調査の双方から行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
天候不良、体調不良のため実施が不可能となった平成24年度の海外視察、国内訪問調査に支出する予定だった研究費を平成25年度に繰り越しているが、それらは再度訪問するための費用として使用する予定である。 その他、平成25年度請求分については、国内視察旅費、海外視察旅費とその際の通訳費用、そして、文献資料購入費用、視察機材費用に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)