2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530073
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
柑本 美和 東海大学, 専門職大学院実務法学研究科, 准教授 (30365689)
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Keywords | 触法精神障害者 / 地域定着支援センター / 医療刑務所 / 社会復帰 / 医療継続 |
Research Abstract |
本年度は、北九州医療刑務所、美祢社会復帰促進センター、麓刑務所、川越少年刑務所を視察し、行刑施設における犯罪精神障害者の処遇の実際を学び、処遇上の問題点について関係者の意見を伺った。大きな問題点として挙げられていたのが、女性刑務所における摂食障害への対応であった。摂食障害は重大な精神疾患であり、さらに非常に人手を要するため、医療刑務所における診療体制に限界があり、一般刑務所からの移送の受け入れに困難を伴うとのことであった。しかし、生命の危険を伴う疾患でもあり、刑務官、刑務所の非常勤医師では対応が難しく、適切な医療体制の確保が喫緊の課題であると感じられた。 さらに、現在、法務省と厚生労働省とが協力して進めている、矯正施設退所者の地域生活定着支援についても、千葉県の地域定着支援センターの勉強会に出席させて頂き、知的障害を有する受刑者の社会復帰に向けた取り組みの実際を学んだ。定着支援センターのスタッフ、法テラスのスタッフを中心とする弁護士達の活動、当事者の苦境を理解し、何とか支援の手を差し伸べようとする福祉施設側の積極的な姿勢に、頭の下がる思いがした。ただ、検討事例として挙げられるケースの多くが、幼少時から問題を抱えていたにもかかわらず、障害者手帳の取得に結びついておらず、矯正施設に行きつくまでに手立てを講じる必要性を強く感じた。 加えて、現在、知的障害者については、定着支援センターのような取り組みがあるが、精神障害者については、医療観察法の枠組みを除けば、矯正施設出所後、医療を継続しつつ社会復帰につなげる仕組みが手薄いので、その点についても検討する必要があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、国内の実態調査に関しては、かなり順調に進めることが出来たと思われる。しかし、海外調査については、なかなか思うように計画が進まず、実施することができなかった。ただ、海外の研究者、実務家との連絡は順調にとれているので、来年度以降はスムーズに海外調査を実施できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は①文献調査、②国内調査、③海外調査の3本柱で進めていきたいと考えている。①の文献調査については、特に、イギリスに焦点を当てて行いたいと考えている。特に、強制通院制度の導入および警察による触法精神障害者の移送制度については、我が国でまだ制度導入がなされていない分野でもあり、多くの示唆が得られるのではないかと思われる。②の国内調査については、長期収容施設を訪問し、そこでの医療処遇体制についてインタビュー調査を行いたいと考えている。③については、可能な限り、イギリスでの視察を行うべく努力したいと思っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していたように海外調査が遂行できていないことが、このような事態を招いている最大の理由である。 海外調査については、現地の研究者、実務家との意思疎通は図れているので、何とか、計画通りに視察を遂行すべく努力したいと考えている。
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