2012 Fiscal Year Research-status Report
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24530076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 哲生 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80230572)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保険 / 因果関係 |
Research Abstract |
主に、海上保険における伝統的な因果関係論の整理、分析に時間を費やした。因果関係論の出発点として、日本では、相当因果関係の考え方が支持されているといえる。もっとも、英米法における近因説をとらないという意味では、相当因果関係説が支持されているといえるとしても、相当因果関係の中身が明確であるわけではない。相当因果関係の内容は、大きくいえば、ある事実を原因として、他方の事実が通常生じるものといえるときには相当因果関係があるということであるが、通常生じるということがどの程度の蓋然性を指すのかはまったく明確ではない。 これを前提として、保険事故に含まれていない非担保危険、保険事故に含まれているが免責事由とされている免責危険に分けて、それぞれが協働することによって損害が発生した場合、事実上それぞれの危険が重複的に存在し、その結果損害が発生しているが、協働しなくても損害が発生したと考えられる場合などに分けられて議論がされている。免責危険が絡んでいる場合には保険者の免責を認める傾向が強いが、免責危険ということで一律に扱うことが合理的か、非担保危険か免責危険かは約款の書き方の問題であり、その違いにより結論を変えることに合理性があるかどうかなどの問題が指摘されているところである。相当因果関係の内容が明確ではないことも含めて、これらの問題は、やはり因果関係論を一般的に論じることの限界を示すものであり、保険給付の種類ごとの個別の検討を深める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海上保険における伝統的な議論の整理、分析はほぼ終わり、具体的な局面における分析を始めている。ここまでの研究により、従来の議論が足りなかった点を明らかにすることができた。すなわち、相当因果関係説が支持されているとはいえ、その内容は明確ではない。これが明確ではないというのは、本研究の視角からすれば、ある意味では当然のことである。相当因果関係を担保範囲の設定の問題であると理解すれば、合理的な担保範囲は、当該保険給付の趣旨にしたがって変わってくることが考えられるのであり、これを一般化して論じても、中身のない抽象的な表現しか出てこないのは当然とも考えられる。このような見地からすれば、合理的な担保範囲が保険給付の種類によって異なることが契約で明示されている例が信用保険ではてん補範囲が直接損害に限るとされているケースであると理解することもできる。 保険数理モデルからみた因果関係論、イギリス、アメリカにおける、保険の経済社会システムにおける意義についても、まだ、途中ではあるが、理解を深めるよう研究中である。この点につき、アメリカでは、特に生命保険については損害保険等と比べて保険者が免責を主張する局面が限られているところがある。これは民間の保険が社会保障において有する意義が大きいところに根ざしているのかもしれない。 以上のような状況であることから、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、契約前発病不担保条項において、保険者免責が認められるためには、契約前の疾病と高度障害との間の因果関係がどの程度必要か、契約前の疾病と後の原因が協働して高度障害が発生した場合に保険者免責になるかどうか、傷害保険において疾病と他の事由が協働した場合に免責になるかどうかを具体的な素材として、因果関係の考え方について研究を進める。この問題についての、日本、イギリス、アメリカの議論状況を整理、分析する。 また、同時に保険数理モデル、保険の経済社会システムとの関わりについても、研究を継続する。特にアメリカでは、社会保障システムが大きく異なることから、民間保険の社会における意義が大きく異なっている。生命保険において保険者免責が主張される局面が狭いということが因果関係論において表れているかどうかにも留意しつつ、分析を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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