2013 Fiscal Year Research-status Report
口座管理機関の義務・責任を軸とした口座振替システムの統一的基礎理論
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24530082
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
コーエンズ 久美子 山形大学, 人文学部, 教授 (00375312)
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Keywords | 証券 / 口座振替 / 信託 / ユニドロア条約 |
Research Abstract |
わが国の「社債、株式等の振替に関する法律(以下、「振替法」)」に基づく証券振替制度は、基本的に従来の物権的な法律構成、有価証券法理を継承することにより、これまでと同様の投資者の権利を維持し、保護するというスタンスを取っている。そこでは、紙媒体であった証券と口座記録を可能な限り同視する方向で法律構成を考えて来た。つまり、口座記録が存在する口座簿の名義人が当該口座記録が表す「証券」を「占有」するという発想から、権利の帰属、移転等について理論構成されているといえる。したがって、たとえば担保制度としては質権が用意されており、それも同様の発想で、質権者の質権口座に記録されることにより質権が成立するとされている。しかしこれについては、すでにシンジケート・ローンなど複数の者に対する担保権の設定に対応できないといった問題点が指摘されていた。 さらに近時、投資信託の事案においてその販売会社であり振替法上の口座管理機関である銀行が、取引先(受益者)に対する貸付債権を自働債権、投資信託受益権の解約金を受働債権とする相殺を主張し、高裁で認められてきている。このような口座管理機関による相殺の事案は、従来の法律構成からは整合的な説明が困難である。口座管理機関が「口座名義人の「証券」を管理しているという口座振替システムの基本構造を踏まえ、実態に即した法律構成を再考する必要があるように思われる。 このような問題意識の下、わが国の振替制度についての説明において、投資者が証券を「直接保有」することの意義を再検証し、制度の法律構成について再考した。また先の投資信託の事案から、相殺の機能的担保に着目しつつ、ユニドロア条約において規定されている「合意」による担保権の設定についての接点を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、ユニドロア条約における担保制度の具体的な中身について、公式コメンタリーを手がかりに検討した。口座管理機関の関与がなければ、口座記録の振替が生じないというシステムの構造的特徴から、口座管理機関を含めた「合意」による担保制度が極めて合理的であルことを理解した。 また投資信託における相殺の事案は、わが国における担保制度とは異質に感じられる「合意」による担保権と、実は、発想としては同根なのではないかという着想を得た。さらに検討すべき論点と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ユニドロア条約、そしてアメリカ統一商法典における担保制度について検討する。わが国における「合意」に基づく担保制度につき、立法を視野に入れつつ、関連する論点を整理し、検討する。このような考察を踏まえて、口座管理機関と口座名義人の法的関係についてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査を予定していたが、学内業務等諸般の事情により実施することができなかった。その分、欧文文献の購入に充当したが、標記の額はその残額である。 次年度はこれまでの研究成果をまとめなければならないが、その前に、海外調査を行い、より深い比較法的検討ができるよう資料収集したいと思っている。
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Research Products
(1 results)