2012 Fiscal Year Research-status Report
企業結合関係における利益相反取引規制・競業規制のあり方
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24530088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 雅史 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90204916)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会社法学 / 取締役 / 企業結合 / 忠実義務 |
Research Abstract |
平成24年は、交付申請書に記載した研究を、①企業結合の運営段階において従属会社の株主等に法律上の救済を与えなければならない程度に、従属会社またはその株主等の利益を侵害している状況およびその救済方法を明らかにする、②会社法改正の動きにあわせて、親子会社法制がどのように変容・発展するかを検討する、③取締役・会社間の競業取引・利益相反取引その他の取締役の忠実義務に関する判例・学説の流れをフォローする、という方法で、原則的に交付申請書に記載した「研究計画・方法」に沿って実施した。 ①について、欧米の文献を収集して検討し、英国や米国での支配株主・事実上の取締役の信認義務に関する議論をフォローするとともに、ドイツでも事実上の取締役に関する判例・学説上の議論があるという新しい知見を得た。 ②について、平成24年9月7日に法制審議会が「会社法制の見直しに関する要綱」を採択し、その中に親子会社関係に関する重要な改正提案が含まれていることから、提案事項の内容を研究会等を通じて検討した。そして上記「要綱」に含まれている重要な改正提案事項である「詐害的会社分割における債権者保護」に関する論文を執筆した。 ③について、取締役・会社間の利益相反関係についての文献を収集・検討し、近時取締役の忠実義務類型として問題の多い従業員の引抜きに関する論文を執筆した。また、取締役の報酬規制についての論文も関連して執筆した。 ①については、平成24年度に得た知見をもとに、平成25年度も引き続きこの問題を掘り下げる。②と③については、平成24年度中に研究成果の一部を公表することができた。平成25年度はテーマの幅を広げつつ研究を深化させたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業結合の運営段階における従属会社の株主等の保護に関する文献の収集および講読・検討を、順調に進めている(上記「研究実績の概要」①)。会社法改正への動きについては、改正事項の検討を精力的に行い、親子会社法制の中心課題の一つである「詐害的会社分割における債権者保護」に関する論文を執筆・公表することができた(同②)。取締役・会社間の利益相反関係に関しても、とくに近時問題が指摘されている個別論点を洗いし、そのうち「従業員の引抜き」と「報酬」に関する論文を公表することができた(同③)。 以上のことから、交付申請書の「研究計画・方法」に従った研究を順調に実施できていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、24年度に行った外国文献および国内の研究の分析をもとに、企業結合の運営段階における利益相反状態の解決のための選択肢を明らかにする。また、会社法上の取締役の利益相反取引・競業取引その他関連する忠実義務違反類型行為にかかる行為規範および責任に関する論文を網羅的に検討し、企業結合関係への同規範の適用可能性を探る。同時に会社法改正動向にも配慮し、関連する論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
取締役責任制度・企業結合法制に関する外国文献および日本の文献の購入、消耗品の購入、国内旅費に使用する。平成24年度は、資料整理のための人件費・謝金のために計上していた額を使用せず、その分(約150千円)が残額となった。この額は、設備備品費、消耗品費、および国内旅費の不足分に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)