2013 Fiscal Year Research-status Report
企業結合関係における利益相反取引規制・競業規制のあり方
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24530088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北村 雅史 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90204916)
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Keywords | 会社法学 / 取締役 / 企業結合 / 忠実義務 |
Research Abstract |
平成25年度は、交付申請書に記載した研究を、平成24年度に行った調査研究をもとに、①企業結合の運営段階において親会社・子会社の少数株主保護のために用意されるべき選択肢を明らかにする、②会社法制の見直しへの動きのなかで示されている親子会社法制に関する改正提案に含まれている少数株主保護制度について検討する、③取締役の競業取引・利益相反取引に関する現代的課題について検討する、という方法で、原則的に研究計画調書に記載した「研究計画・方法」に沿って実施した。 ①については、平成24年度に引き続き、欧米の文献を収集・検討した。とくにアメリカ法における信認義務者の義務内容の近時の展開を重点的に調査し、デラウエア州等の判例法において注意義務、忠実義務のほか誠実義務というカテゴリが形成されつつあるとの知見を得た。また、米国における多重代表訴訟制度の形成過程についても深く掘り下げた研究を行った。 ②については、法制審議会が採択した「会社法制の見直しに関する要綱」に含まれる諸論点を深く検討し、いわゆる残存債権者保護の問題を扱う「濫用的会社分割と債権者保護制度の多様化」および社外取締役制度の功罪について考察する「コーポレート・ガバナンスと会社法改正の動向」と題する論文を執筆した。 ③については、利益相反取引による取締役の責任について民法の債務不履行理論との関係を検討し、これに関する論文を執筆した。 平成26年度は、補助事業期間の最終年度である。これまで、比較的順調に本研究の成果の一部を公表してきたので、平成26年度も引き続き研究成果の発信を行いたい。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
企業結合の運営段階における従属会社の少数株主等の保護に関する内外の文献の収集・講読と、その検討を順調に行っている。会社法改正に関しては、詐害的会社分割の場合の債権者保護の選択肢と、会社法改正提案に含まれるコーポレート・ガバナンスに関する問題を検討する論文をそれぞれ執筆することができた。利益相反取引については、利益相反取引に関する取締役の任務懈怠責任を民法理論を踏まえて検討する論文を執筆することができた。 以上のことから、交付申請書に記載した「研究計画・方法」に従った研究を順調に実施できていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、補助事業期間の最終年度でもあり、過去2年間行った企業結合に関する内外の文献の精査と先行研究の分析をもとに、企業結合の運営段階における利益相反状態からの少数株主等の保護のための選択肢に関する研究のとりまとめを行う。また、会社法改正法案において具体的に明らかになった諸問題についても、引き続き関連論文を執筆する。 なお、本研究が比較法の主要な対象国とした米国法について未解決の問題につき、現地の専門家による助言を受けるため、年度途中に短期間渡米したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品購入費が予定よりも低額で済んだこと、本研究の出張調査を他の目的の出張の機会に合わせて行ったため旅費の支出がなかったこと、および資料整理等を自分で行ったため謝金が不要になったことによる。 本研究に含まれる外国法(米国法)の部分につき未解決の問題に関する助言を受けるため、外国出張旅費として使用するとともに、研究のとりまとめのための資料整理等のための謝金として使用する。
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Research Products
(3 results)