2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
洲崎 博史 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20211310)
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Keywords | 自動車保険 / 保険契約 / 支払基準 / 人身損害 |
Research Abstract |
自賠法16条の3第1項が規定する支払基準の意義について判示する最高裁判決が新たに公表された(最判平成24年10月11日金判1406号36頁)。同判決は、上記支払基準の意義に関しては、最判平成18年3月30日民集60巻3号1242頁で示された考え方を踏襲するものであったが、対人賠償責任保険によってカバーされるべき損害賠償義務の範囲について任意社と自賠社の判断が異なるという珍しい事案を扱うものであったこともあり、被害者の損害額や加害者の賠償額の算定を巡る自賠社と任意社の関係、というこれまで必ずしも十分に解明されていなかった問題に目を向けさせるものとなった。そこで、平成25年度の前半は、自賠社と任意社の関係に焦点をあてて資料の収集や実務家からの意見の聴取を行い、本研究のいわば中間発表としての論文を執筆する方向で準備を行った。しかし、平成25年10月に研究代表者が法科大学院長(京都大学大学院法学研究科法曹養成専攻長)に就任し、法科大学院認証評価や文科省が求める法科大学院制度改革への対応に追われるなどしたため、論文の完成には至らなかった。また、当初予定していた米国またはドイツにおける資料収集も同様の理由から実施することができなかった。 しかし、上記判決をきっかけとする資料の収集や理論的検討を通じて、損害額の算定をめぐる自賠社と任意社の関係についてこれまでわが国では十分な情報が発信されておらず、この関係をめぐる実務状況を明らかにすることが本研究を進める上でも重要であるとの知見を得ることができた。そこで、平成26年度はまずはこの問題に焦点をあてて研究を進めることを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、諸般の事情から論文の公表には至らなかったものの、論文執筆に向けての準備は進められた。執筆のためのある程度まとまった時間を確保することができれば、公表は可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、最終的には自動車保険における人身損害の損害額算定基準の在り方を検討するものであるが、上記の通り、研究の順序としては、まずは損害額または賠償額の算定にあたっての自賠社と任意社の関係を明らかにすることをさしあたりの目標とし、人身傷害補償保険における損害額の算定はその先の問題としたい。法科大学院長の任期が平成27年9月まで続くため、研究時間をいかに確保するかが最重要課題となりそうであるが、平成25年度に収集した各種資料・情報を分析・整理し、論文として公表することは何とか実現したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年10月から法科大学院長に就任し、喫緊の課題に対応する必要が生じたため、年度後半に予定していたドイツまたは米国での資料収集を断念せざるを得なくなったことが主な理由である。 平成26年度にドイツまたは米国での資料収集を行うことで使用する予定である。
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