2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 典孝 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (00278087)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人身傷害補償保険 / 無保険車傷害保険 / 保険法 / 酒気帯び免責条項 / 危険増加 |
Research Abstract |
平成22年4月1日より施行された保険法においては、民法との関係が非常に重視され、また片面的強行規定の導入などから、平成20年改正前商法における任意規定を前提として構築された様々な保険法理論について修正や新たな理論の構築が求められる問題も生じてくるものと考えられる。本研究は、保険法に対応した新保険約款を踏まえた新保険法における理論面のみならず、運用面においての問題を検討するものである。 平成24年度は以上の研究目的を関連して、任意自動車保険における酒気帯免責条項が保険法29条の危険増加による契約解除との関係でどのように捉えるべきか、また当該免責条項を巡る裁判例等を検討した論文を保険学雑誌に掲載した。また人身傷害補償保険を巡る近時の裁判例を素材に、保険法との関連性も踏まえた論点に関して論文を阪大法学に掲載した。さらに無保険車傷害保険の法的性質も踏まえた最高裁判決の解説を公にした。また第27回日司連中央研修会「司法書士の業務責任~業務賠償責任保険を通じて~」第1講「保険法から見た司法書士業務賠償責任保険」、第3講(パネルディスカッション)「司法書士業務責任と賠償責任保険の有り様をめぐる諸問題」において、新保険法下における専門職業人賠償責任保険である司法書士業務賠償責任保険との関係について報告及びパネリストとして発言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保険法制定後における人身傷害補償保険や無保険車傷害保険の法的性質に関する理論的な問題、損害保険の偶然性、傷害保険における傷害概念を定義付ける偶然性の意義、保険者の請求権代位における差額説との関係、について約款条項も踏まえた検討を行うことができ、不十分ながらも研究論文をまとめそれを公にすることもできた。保険法下における告知義務と詐欺取消・詐欺無効に関する新たな争点に関する理論的な検討について実務家とやり取りをする機会も得られて、それを次年度以降、さらに理論的な展開として論文にまとめることを考える機会も得られた。また保険法下における専門職業人賠償責任保険に適用される約款についても検討する機会を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
保険法施行後2年を経過した関係もあり、保険法の規定を直接の論点とする裁判例も出てきた。保険法において告知義務を質問応答義務として片面的強行規定とした趣旨と、民法の詐欺との適用や、告知義務解除・免責に関する因果関係不存在特則との関係等が争点とされた仙台高判平成24年11月22日を素材に、平成20年改正前商法における議論との相違等を踏まえて、保険法での理論的問題について研究を進めることを考えている。また、保険金受取人変更と相続との関係で問題となった裁判例も出てきたことから、この裁判例も検討することを考えている。また、保険法17条2項において責任保険契約における重過失免責が任意規定であるが免責から外れているとこと、法律職業人賠償責任保険契約に適用される約款で免責条項として規定されている、いわゆる認識ある過失との関係について、再度、諸外国での法律職業人賠償責任保険での運用を踏まえた上で、検討を行うことを計画している。またヨーロッパ保険契約法に関する専門家グループが2013年度を目処に、ヨーロッパ保険契約法原則に関して一定の見解を示す予定とされており、その内容も比較法的に重要な内容と考えられることから、資料等の入手ができれば、研究対象としたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
保険契約法は、実務的な学問分野であることから、実務状況を正確に把握する必要性から、保険会社の実際の運用についての専門的な意見を伺う必要がある。そのため、各保険会社の商品開発運用又は支払部署を訪問し、実務的な情報の提供をお願いする必要性がある。そのため、国内旅費は主に、資料収集・情報提供を受けるために、東京への出張費にあてられる。また関西地区のみならず東京で開催される保険法関連の判例研究会にも積極的に参加し、新保険法における研究者や、実務家との裁判例を解した知見を得られる機会をできる限り持ちたいと考えている。 さらに、フランス、ベルギー、カナダでの法規制や判例法理等を知るための、保険法や民法等の文献を入手するために研究費を利用すること考えている。また必要な資料が国内の機関やインターネット等で入手することが困難な状況でかつ必要性がある場合には、他の研究助成金も利用して、資料収集のため外国出張を計画することも考えている。 なお、平成24年度中に、中間報告として、立命館大学商法研究会その他の研究会、場合によっては、日本保険学会での個別報告等も含めて少なくとも1回は行うことを考えている。
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Research Products
(4 results)