2013 Fiscal Year Research-status Report
非占有担保の収益担保化がもたらす諸課題と対抗要件・公示制度の将来
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24530092
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 剛 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (00287913)
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Keywords | 動産譲渡担保 / 債権譲渡担保 / 過剰担保 / 将来債権譲渡 / 譲渡禁止特約 / ドイツ |
Research Abstract |
平成25年度は、動産担保法・債権譲渡法の双方に関する立法論的な課題として、担保権者が債権担保目的との関係で過剰な分量の目的物を支配する可能性があることから、これを適切に規制する枠組みを考察した。 具体的には、第一に、ドイツ法における過剰担保法理の意義と特質を明らかにし、比較法的分析を加えることにより、設定者の解放請求権を容認するという立法論的な検討の余地があることを示唆した。同論文は近くABL法制研究会のメンバーと共同執筆する論文集として刊行される予定である。 次に、債権譲渡法に関する業績としては、一つには、平成25年度に公表された民法(債権関係)の改正にかかる中間試案の内容を検討し、その意義と問題点を分析する論文を学内紀要(阪大法学288号)に掲載した。 さらに、債権譲渡法に関する第二の業績として、将来債権譲渡後に譲渡人が債務者との間で締結した譲渡禁止特約の効力を扱った重要判決である東京地判平成24・10・4判時2180号63頁につき評釈を加えることで、債権法改正の議論に一つの視点を加えた。 不動産法との関係では、建設請負契約における請負報酬債権の担保との関係で、完成建物および出来形部分についての所有権帰属に関する判例法を網羅的に分析し、従来の議論にはみられなかった分析視角を付加した(詳細な判例評釈の形で、法学教室401号に掲載した)。 同時に担保物権の通有性とされている付従性および不可分性の意義の再検討を進めており、次年度にその成果を論文にまとめることができるよう、夏期におけるドイツ出張の際、フランクフルト大学およびミュンヘン大学の図書館で資料を収集するとともに、ドイツの教授との会談を通じて最新の議論状況について情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】で述べたとおり、平成25年度に予定していた課題のうち、担保権の効力を規制するためのドイツ特有の法理である「過剰担保」理論の意義と問題点については、ほぼ予定度どおり考察を深めることができた。もっとも論文の公表は、他の共著者との書籍出版という形態をとるせいもあり、予定よりも少し遅れている。しかし、実質的には、夏季休暇を利用したドイツ訪問の成果もあり、ドイツ法を比較法的に分析したうえで、日本における将来債権譲渡担保における規制法理として、同法理が貴重な視点を提供していることを示すことができた。研究成果は大阪弁護士会に所属する倒産弁護士有志の研究会の場で報告し、実務的な見地からの指摘をふまえ、さらに実務的にも意味のある研究へと高めるための礎石を築いた。 次にもう一つの研究の柱としていた担保物権の通有性としての付従性に関しては、資料収集作業自体は順調に進んだものの、現時点では分析作業を十分に進めることができていない。もっとも、昨年度より新たに加入した民法改正研究会担保法部会において研究報告の場を設けていただくことになった。このように、ドイツ法における付従性理論の捉え方の研究を進め、日本法の立法論に役立つ成果を導く共同研究体制を構築できたことは、研究を一刻も早く前に進めるうえで、重要なステップをふんだことになる。 また抵当権法に関しては、抵当権の効力の及ぶ範囲、共同抵当をめぐる法律関係、抵当権と用益権との衝突場面における利益調整に関して、若干の個別問題について判例研究を行ったにとどまる。不動産担保法の研究の進展も若干予定より遅れているが、次年度にまとまった業績が出せるよう、鋭意執筆のための準備作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は担保物権の通有性とされる付従性および不可分性の概念の基礎研究を結実させ、論文にまとめる予定である。さまざまなタイプの担保物権法制の組み立て方を比較法的に分析し、従来自明視されてきた付従性および不可分性の意義について再検討を行う予定である。 また、抵当権法に関しては、抵当権の効力の及ぶ範囲について物権法総論レベルでの理論枠組みとの整合性を意識した解釈論を展開し、担保物権法が物権法の各論的分野であるという現行法の体系構築を重視した研究成果をまとめる予定である。 並行して、抵当権と用益権の調整に関する法理論に関しても、民法177条の対抗要件制度論という物権総則レベルでの一般論との関係性を十分に意識した体系的研究へと高めてゆく予定である。具体的には取得時効と登記に関する判例の5つの準則を支える考え方がどのような場面にまで適用可能なのか、地役権、地上権、賃借権などの用益権との関係を素材に研究を進める予定である。 債権譲渡登記制度の在り方については、債権法改正の動向をにらみながら、その緊急性に合わせて、研究の順序を見直す予定である。動産登記制度に関しては、引き続き、立法論をにらんでどのような登記制度を構築すべきかの考察を継続するが、当初の計画とは異なり、本年度中に一定の提言や立法論を展開することは、研究の進捗状況の遅れもあるため、差し控え、今後の研究課題としたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、ほぼ予定どおりに支出したが、初年度(平成24年度)に予定していた海外出張が本務校の仕事の都合でできなかったため、当初海外出張旅費として使用予定であった分に相当する額が次年度分に繰り越された。その分がそのまま最終年度に繰り越される形になっている。 最終年度にあたる本年度(平成26年度)に研究成果を研究会や学会等の場で発表するため、その旅費及び参加費にあてる予定である。
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Research Products
(9 results)