2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530093
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上田 竹志 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80452803)
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Keywords | 責任分配 / 当事者変動 |
Research Abstract |
1.平成25年5月18日、平成25年度日本民事訴訟法学会(於上智大学)において、「任意的当事者変更」の題目で個別報告を行った。本報告においては、①兼子一「訴訟承継論」におけるドイツ任意的当事者変更論の紹介以降、議論が停滞していた任意的当事者変更論について、現代ドイツにおける議論の水準を紹介した上、日本法における解釈論上の示唆について検討した。②当事者とりわけ原告の視点から見た任意的当事者変更制度の意義について検討を行い、責任概念を基軸として、訴訟制度が制度外の諸価値や事情をどのように取り込むべきかについて、任意的当事者変更論についても積極的な提言を行った「第三の波」の議論を検討対象としつつ、一般的な分析を行った。 2.1の成果について、学会報告時に頂戴したご意見、ご質問を受け止めつつ、上田竹志「任意的当事者変更について」民訴雑誌60号171頁以下(2014年)を公表した。右論考を執筆する途上で、制度利用者たる当事者の責任負担のあり方を実効的に論じるに当たり、実体法上の人間類型に着目することが有益であると考えるに至った。 3.平成26年3月13日、福岡家族法研究会(於福岡家庭裁判所)において、「家事事件手続法における手続保障」の題目で個別報告を行った。右報告においては、家事事件手続法において職権探知主義を採用する正統性を、実体的真実発見や公益に求めることが困難であり、家族実体法が予定する人間類型(「家族」)にふさわしい手続負担の観点から、職権探知主義を根拠づけることが可能であるとの提言を行った。 4.平成26年3月22日、九州民事手続研究会(於九州大学)において、「債券管理会社による任意的訴訟担当の可否」の題目で個別報告を行った。右報告においては、金融商品取引で予定される人間類型(「投資家」)が、任意的訴訟担当の許容要件を緩和させ得るとの提言を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.本年度は、研究成果について論考を公表したほか、複数の学会・研究会において研究実績の報告を行うことができた。 2.当事者の責任負担を検討する上で、民事訴訟法学が直接に制度外の社会的諸要請を考察するのではなく(一定の社会観をもってこれを行ったのが、いわゆる「第三の波」であったと推察する)、訴訟物論争における新訴訟物論と同様、実体法が予定する行為負担のあり方(行為規範としての妥当性検証)を、手続法上も反映させることが、近似的ではあるが実効的な法解釈論を展開する上で有用であるとの知見に至ることができた。 3.右知見に基づいて、民事訴訟法の解釈論上の論点(任意的訴訟担当の許容要件)や、家事事件手続法の審理構造(職権探知主義採用の根拠)といった、具体的な問題について検討を進めることができた。 4.これと並行して継続的に、消費者契約法および平成25年に成立した「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」における権利義務主体(消費者)の手続上の責任負担についても分析を行っており、これについても順調に検討が進んでいると評価できる。 1、4については、当初の研究計画通りに進捗した。2および3は、当初の研究計画を超えて検討が進んだ箇所であり、全体の研究計画から見ても重要な進捗を遂げることができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成25年度において獲得した、実体法上の人間類型からみた手続負担のあり方について、より議論を整理して、一般的な責任負担論の検討につなげる。議論の整理に際しては、ニクラス・ルーマンの社会システム理論、ケア理論(または調停理論におけるトランスフォーマティヴ調停、ナラティヴ調停理論)、アーキテクチャに関する議論の枠組み等が、一定の示唆を提供するのではないかと推測している。具体的には、平成25年度において検討した人間類型は「投資家」「家族」「消費者」であるが、これを「法システムでないシステムから、統一的に法システムを観察する観察者」「ケア的な見地から、統一的でない方法で法システムを観察する観察者」「アーキテクチャ内のプレイヤーとして、法システムを観察しない者」などに抽象化することが可能である。 2.1のような議論の整理は解釈論にとっては予備的な作業であるため、具体的な解釈論上の論点について、1で得た知見を踏まえ、提言を行う。 3.2について、九州大学法学部紀要「法政研究」81巻4号に論説を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた書籍等について、一部購入手続が終了しなかったものがあったため。 平成26年度は、主に研究に必要な書籍を購入するほか、関東、関西の研究会(特に、東京で多く開催される消費者法関連のイベント、および関西民事訴訟法研究会)へ出張するための旅費として支出を行う。
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Research Products
(4 results)