2013 Fiscal Year Research-status Report
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24530094
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小池 泰 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00309486)
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Keywords | 民法 / 家族法 / 親子法 / 親権 |
Research Abstract |
本年度は、共同親権をめぐる議論を素材として、親権は子の福祉のためだけに存在するのか、という点を検討した。ドイツでは1997年改正法(民法(BGB 1626a条))、オーストリアでは2001年改正法により、従前の離婚後は単独親権とする制度から、共同親権を認める制度へと変更された。このような変化に対しては強い批判もあり、また、具体的に共同親権を認めるか否かをめぐる紛争も新たに生じることになったが、制度自体は定着したものといえる。さらに、婚外子についても、共同親権制度の導入が図られている(ドイツは前掲のBGB 1626a条、オーストリアは2012年改正法の民法(ABGB)177条)。その契機となったのは、いずれも憲法裁判所の判断である(ドイツは憲法裁判所(BVerfG)の1991年5月7日決定、オーストリアは憲法裁判所(VfGH)の2012年6月28日判決)。共同親権をめぐる議論の検討からは、ここでは親権の権利性が決定的な役割を果たしており、子の福祉は、親権の権利性の対抗概念として機能するにすぎないことが判明した。すなわち、面会交流の問題におけると同様に、両親との接触を保ちつつ成育することに子の利益があり、この判断を親権の帰属制度に以下に反映するか、というのが問題の構図となる。この構図を前提として、親権の権利性及び男女間の平等の二つの観点が働いて、共同親権制度の拡大に至ったものということができる。 また、親権下における子の主体性については、医療行為に関してドイツは明文化の試みがあったものの挫折したのに対して(1979年配慮法改正の際の政府草案1626a)、オーストリアではそれに成功した(ABGB 146c条(2001年)、現173条)。もっとも、本年度では、この点について詳細な検討ができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、子の福祉の現代的意義の解明にある。もっとも、子の福祉という概念は、その意味する内容が必ずしも一義的ではなく、明確化を必要とする。そこで、本研究では、「子の福祉」という抽象的な概念を個別の問題の文脈に即して検討し、最終的に本概念がどのような法的意義を担いうるのか、を明らかにする、という方法を採っている。本年度に検討した共同親権の議論においては、「子の福祉」の概念は、親の権利性の対抗概念としての意義をもつにすぎなかった。これは、親権の帰属の場面は、子と親の関係性ではなく、むしろ、父と母の間の関係性が前面に出てくるため、「子の福祉」にはそこでの調整の役割が期待されることによる。「子の福祉」という概念が文脈に応じて様々な意義を持つのは確かだが、子について自律・他律それぞれの妥当領域を画する文脈と、たんに利益衡量において子の利益を量るための受け皿にすぎない文脈とは、明確に区別すべきである。この点を明らかにした点で、目的の達成度はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度に積み残した「親権下における子の主体性」について検討を進めたうえで、「子の福祉」概念に関するこれまでの検討を総括する。後者に関して、計画では、Coester「Kindeswohl」(1983年)を取り上げる予定であった。しかし、この書が唯一といってよい理論的なモノグラフであるとしても、1980年代以降の出自を知る権利・面会交流権等の展開に鑑みると、古典とはいえ「子の福祉」の現代的意義を推し量るのに最適といえるかには、疑問が生じてきた。これは、オーストリア2012年改正法(2013年施行)が「子の福祉」の概念を明確化した規定(ABGB 138条)を設けたことにもよる。この規定は、「子の福祉」を指導概念と位置付けたうえで、個別の文脈において考慮されるべき観点を12個挙げたもので、比較法的にも類例がない非常に興味深いものである。このように、「子の福祉」は、従前の理論的作業から一歩進めて、概念の内容に踏み込んだ立法が登場するに至っている。そこで、本年度は、医療行為に関する子の自己決定可能性の明文化(2001)、及び子の福祉概念の明確化(前掲)本規定に焦点をあて、2000年代のオーストリア親子法の変遷の中に位置付けつつ、分析を行い、「親権化における子の主体性」及び「子の福祉」の現代的意義の総括、この二つを並行して検討することにしたい。
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