2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530097
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
山田 剛志 成城大学, 法学部, 教授 (30282966)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 格付会社 / 民事責任 / IOSCO / 欧州委員会 / 証券化商品 / アナリスト |
Outline of Annual Research Achievements |
サブプライム問題で市場が混乱した原因の一つに、急激な格付低下の問題が指摘されている。そのような背景もあり、アメリカ及び欧州は金融再規制に積極的であり、信用格付機関にもその形態(ビジネスモデル)自体を検討する等、格付会社に対する不信感は想像以上に強い 。格付会社に対する民事責任及び包括的なルックバックレビューを義務づけるべきか。 民事責任については、日本ではあまり判例がないが、一方アメリカ判例法現行法によれば、プルンパース事件では、「信用格付は客観的な事実ではなく、信用格付機関が用いている分析モデルと要素に基づきそれぞれの機関が信じている意見の陳述(statement of opinion)にすぎない」。 ルックバックレビューについては、義務的なアナリストのローテーションルールを設ける提案がなされているが、その場合適切な品質を持つ格付が維持できるか、格付会社から反論がなされていた。その際アナリストの変更に際して、現行法でもルックバックレビューが義務づけられているが、アナリスト等の交代に関係なく、急激な格付の変更に関し、事後的に「なぜ格付を急激に見直さざるをえなかったのか」、一定以上の変更(たとえば数週間に3段階以上の変更)がある場合に、その基礎的事情の変化を記したルックバックレビューを格付会社に、自ら公表する義務を課すべきだろうか。恐らく格付会社によるルックバックレビューは、格付の制度を向上させるためには極めて有効ではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2007年夏以降に顕在化したサブプライムローンの証券化商品に端を発する世界的な金融危機に関連して、投資銀行や機関投資家がサブプライムローンの証券化に際して、格付会社の格付を無条件に信頼したことが、その後の世界的危機を引き起こした一つの要因というのが定説となっている。その際格付会社による不適切な格付及び証券化商品の原資産の開示が不十分だったことが、その原因とされている。 その原因を実質的に調査する予定だが、格付会社による格付に対する判断理由が開示されていないため、間接的な情報しかないため。
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Strategy for Future Research Activity |
欧州の財政危機において、アメリカ系の格付会社が国債の格付けを低下させたことが、財政危機を助長したとして、格付会社への規制が強化されていることは、述べてきたが、ここで厳密に議論するためには、欧州危機で批判の対象となっている格付は、非依頼格付(勝手格付)である点である。 従来非依頼格付については、格付先から依頼を受けないで行う格付と認識されており、格付先の事前の了解に関しては、日本格付研究所に関しては、事前承認を取るとされているが、その他の格付会社は明文でそのような記載は格付方針等には記載されていない。 そこで、格付会社の責任を、依頼格付と非依頼格付に分けて検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた格付会社の現地調査が、相手方の都合による延期となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度レビューに基づく調査を行う予定。
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