2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530097
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
山田 剛志 成城大学, 法学部, 教授 (30282966)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 格付会社 / 証券市場 / ゲートキーパー / 民事責任 / ドッドフランク法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2007年夏以降に顕在化したサブプライムローンの証券化商品に端を発する世界的な金融危機に関連して、投資銀行や機関投資家がサブプライムローンの証券化に際して、格付会社の格付を無条件に信頼したことが、その後の世界的危機を引き起こした一つの要因というのが定説となっている。その際格付会社による不適切な格付及び証券化商品の原資産の開示が不十分だったことが、その原因とされている。 本研究では、上記の原因および格付け会社に対する規制のあり方について、比較法的に研究を行った。
投資家が判断を誤った背景には、証券化商品に実態以上の高い格付けが付されていたとされる。格付け機関が実態より高い格付けを付けた理由として、1)証券化商品の格付けビジネスにはもともと利益相反問題が存在する、2)格付けモデルの妥当性に関し適切な検証またはディスクロージャーがなされていなかった、3)投資家が格付けとは民間企業の評価であるという事実をよく認識していなかったことが理由として挙げられる。
このように近時のアメリカにおける信用格付をめぐる判例の動向からすると、信用格付が客観的なデータと主張して付与されていない限りは民事責任は生じないというのが従来の判例の動向といえるが、他方機関投資家のような一群にのみ向けられる格付は、言論の自由により保護される意見ではなく、合衆国憲法第一修正による主張は成り立たないという判示は重要な意味を持つこととなろう。
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