2014 Fiscal Year Research-status Report
会社法の視点から見た国際会計基準の導入の意義と課題
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24530101
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
荒谷 裕子 法政大学, 法学部, 教授 (80125492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IFRS / 会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、会計学と会社法が交錯するIFRSの課題について、全国企業、特に、中規模企業においてIFRSを導入する意義および課題等について研究調査を行った。また、平成26年7月に公表された日本版IFRS草案(JMIS)の実務界におよび学界の評価・今後の移行状況等について関係者と意見交換を行った。当初の予想とは大幅に異なり、日本版IFRSの評価はそれほど高くなく、むしろ会計基準が新しく加わり、かえってコストや採用の可否の判断等に問題を残すのではないかといった課題の指摘が多く見られた。グローバル化が加速する中で、日本版IFRSというやや中途半端な感のある独自の制度を採用するよりは、今後は、IFRSへの移行が大企業を中心にむしろ増えるものと思われる。また、IFRSは原則主義を採用することから、平成27年施行の会社法に基づく取締役等役員の責任、グループ企業運営にかかわるガバナンスシステムの再構築も、今後大きな課題となるものと思われるということを改めて検証することができたことは大きな成果であると言える。 なお、IFRSと自国独自基準を使い分ける制度設計を採用するフランス等EU諸国の状況を検証することによって、事実上4つの基準、すなわち、日本基準、アメリカ基準、IFRS,日本版IFRSが並存することになったわが国にとって、今後どのような方向に進むべきかをその方向性と課題を明らかにするために、前年度に引き続きフランスにおける状況等について研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年に公表された日本版IFRS草案(JMIS)に関して実務界におよび学界の評価・今後の移行状況等について関係者と意見交換を行ったところ、当初の予想とは大幅に異なり、日本版IFRSの評価はそれほど高くなく、むしろ会計基準が新しく加わり、かえってコストや採用の可否の判断等に問題を残すのではないかといった課題の指摘が多く見られたこと、グローバル化が加速する中で、日本版IFRSというやや中途半端な感のある独自の制度を採用するよりは、今後は、IFRSへの移行が大企業を中心にむしろ増えることが予想されるものの、依然として業界によって温度差が大きいいことに加えて、平成27年の会社法改正を控えて、役員の責任や内部統制システム等を左右するガバナンスシステムがどのように変容するのか施行を待たなければならなかったこと等から、当初の研究目的を遂行する予定がやや遅れている状況にある。 また、アジアで唯一、政策的な配慮から、平成24年度から会社法によってIFRSを連単同時に導入した韓国における経済等への影響や今後の見通し等について、政府関係者や証券規制当局等からヒヤリング調査を行う予定であったが、日韓関係の悪化から先方との日程調整ができず、関係各所との意見交換・ヒヤリング調査ができなかったことは、当初の研究目的遂行を困難なものとしている大きな一因であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた韓国のIFRS導入が会社法、韓国経済に及ぼした影響と課題について、わが国の今後のあり方を考える上での比較法的考察を行いたいと考えているが、日韓関係の改善の見通しが現時点では立たないことから、その場合には、平成26年6月にASIBJが公表した日本版IFRSと任意適用要件の緩和が、わが国の企業、特に、中小規模企業に及ぼす影響、および平成27年5月1日施行の会社法および同年6月適用されるコーポレート・ガバナンス・コードとの関係で、どのような影響を及ぼすのか、その課題と問題点について、検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度研究課題であるIFRSをアジアで初めて連単で完全強制適用した韓国において、政府関係者・証券取引当局などから、その及ぼした経済等への影響や今後の見通し等について、ヒヤリング調査を行う予定であったが、日韓関係の悪化から先方との年度内での日程調整ができず、関係各所とのヒヤリング調査・意見交換が困難になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額は、関係が改善すれば、当初の予定どおり実地調査を行いたいと考えているが、それが困難な場合には、韓国における調査に代えて、平成26年6月にASJBJが公表した日本版IFRSと任意適用の要件が緩和されたことに伴い、わが国の企業、特に、地盤沈下が激しい地方経済の中で、まだ調査研究を行ってこなかった九州・沖縄地区への聞取り調査、およびフランス・日本における研究課題に関する書籍の購入にしようする予定である。なお、これによって、研究目的自体の内容を変更することはない。
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