2012 Fiscal Year Research-status Report
賃貸住宅市場の変貌と交渉力格差論の視点からの法規制の方向性の研究
Project/Area Number |
24530104
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
内田 勝一 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (10063794)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 取引交渉能力論・アメリカ |
Research Abstract |
本年度は、研究課題に関して幅広い視点から基礎的な論点の検討をおこなった。 日本法に関しては、賃貸住宅市場の法的規制の中心である借地借家法の判例検討をおこなった。具体的には、平成以降の公表された借地借家判決を全て収集し、その分析をおこなった。この分析に基づき、平成25年度中に借地借家法の解釈論的なテキストを出版する予定である。また、契約交渉力格差に関する消費者契約法上の議論を住宅市場の特性との関係で分析する作業を始めた。当初予定していた住宅市場の現状調査については、次年度の課題とすることにした。 本研究はアメリカを比較法的な検討対象としている。本年はまず、アメリカ契約法における契約交渉力格差論の検討をおこなった。とりわけ、批判的法学論の観点から分析をおこなうダンカンケネディ教授の取引交渉能力論に関する理論的研究をその当初からにさかのぼっての検討をおこなった。取引交渉力不均衡論に関しては、どのような観点から分析するかが重要であること、及びリベラリズムに基づいた福祉的観点の限界について明らかにした。本研究は賃貸借法制、不動産法制に関連するので、同じくハーバード大学のシンガー教授の不動産法論を分析の基礎におき、アメリカ不動産法の近時における理論的発展動向を検討した。本年度予定していたアメリカにおける賃貸住宅市場及び、契約法・不動産法に関する研究者との理論的な研究交流に関しては時間的な余裕を見いだすことができなかったので、平成25年度の課題とすることにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は借地借家法の判例分析を中心に研究を進めた。その結果、当初の予定よりも進捗が進み平成年度の全判決の分析をすることができ、その結果を基にしたテキストを平成25年度に刊行する予定となった点は予想以上の進展である。 アメリカ契約法及び不動産法の研究は当初の予定通り進んでいる。 しかしながら、本学の国際担当副総長・常任理事として海外出張が年間15回ほど生じたため、日本の賃貸住宅市場の実態調査、及びアメリカにおける実態調査、研究者交流の時間をとることができなかった点は予定より遅れ気味である。 それ故、全体的には当初の計画通り順調に進捗していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
日本法の検討に関しては、当初の予定通り、不動産賃貸借市場の実態分析、賃貸借法の検討をおこなう。賃貸借法に関しては、前年度は判例分析を中心にしたが、本年度は理論的な分析を中心とする。すなわち、賃貸借法における基本的な理念、いわゆる弱者保護論では不十分であるので、実質的な契約自由の確保、とりわけ居住移転の自由保障という観点から理論を深めることとする。 消費者契約法に関しては、本年度からの中心的な課題とする。 アメリカ住宅市場の実態調査、アメリカの研究者との交流に関しては夏以降の秋学期におこなうこととする。 アメリカ契約法、不動産法に関する分析はこれまでの方針にそってすすめるとともに、本年度からはイギリスをも対象とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては前年度の研究を踏まえて、一層の進展を目指す。とくに日本の消費者契約法における情報量格差、交渉力格差にかんする立法過程を踏まえての研究、及び比較法的な検討をおこなう。契約・取引交渉能力の格差論に関しては、比較法的な研究が盛んであるので、アメリカ、イギリスに加えて、ドイツ、フランス、EUにおける理論的な進展状況を検討する。とともに消費者契約法制定以降の日本における理論的研究及び判決例の進展についても研究をおこなう。賃貸借法研究に関しては法の指導理念に関する理論的な検討を中心とする。 イギリスの住宅市場及び賃貸借法制に関しては、これまでの研究成果を踏まえ、近時の進捗状況をフォローする。くわえて、契約法にこける取引交渉能力の不均衡論の研究を文献調査を中心としておこなう。前年度の実施が不十分であったアメリカについても継続的な検討を進める。このため、アメリカ、イギリスの研究者との国際情報交流をおこなう。 日本の住宅市場の実態調査分析に関する研究を進める。
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