2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24530105
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
玉井 利幸 南山大学, 法務研究科, 教授 (90377052)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | M&A / MBO / 締出取引 / 取締役の義務 / 支配株主の義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、M&A取引における株主救済の拡充を図るために、M&A取引における取締役及び支配株主の一般株主・少数株主に対する義務の確立と、差止めによる救済方法の拡充を図ることにある。2014年度はMBOにおける取締役の義務とMBOの差止めの可能性について研究を行った。 M&A法制の目的は対象会社の有形・無形の資産がそれを利用して最も高い価値を創造しうる相手に移転するようにすることであると考えるべきである。M&Aを行う取締役はそのような義務を負うべきであり、裁判所はこの目的に資する審査をすべきである。MBOに限らず、M&A取引においては、取締役は、(1)M&A取引を行うか、(2)行うのなら取引相手は誰にするか、(3)対価の種類・額(割合)はどうするかを判断することになる。これらの判断が取締役の自己利益追及により歪められている可能性が類型的に高い場合は、裁判所は事前・事後に介入し、取締役の判断が精査されるべきである。MBOは上記(2)の判断と(3)の判断が取締役の自己利益追求により歪められている可能性が類型的に高い取引であるので、裁判所は上記(2)のMBOを行うという判断についても精査すべきである。日本の裁判所はMBOを行う会社の取締役は公正価値移転義務を負うとしたが、これは上記(3)の対価額の判断の利益相反性に着目した審査であり、MBO実施の判断については経営判断原則類似の緩い審査しかしていない。これに対し、米国デラウエア州法のレブロン義務とレブロン基準は上記(2)の判断における取締役の利益相反に着目した審査方法であると考えられる。M&A法制の目的実現のためには、対価の額に重点を置いた公正価値移転義務よりも、取引相手の選択の利益相反に着目したレブロン義務・レブロン基準の方が優れており、MBOにおける救済方法は、事後的な損害賠償ではなく、差止めによる救済の方が望ましい。
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