2012 Fiscal Year Research-status Report
プロ・スポーツ団体の多様性と各団体構成員の権利関係についての重層的考察
Project/Area Number |
24530113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
志谷 匡史 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60206092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 典之 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70203247)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スポーツ法 |
Research Abstract |
本研究は、プロ・スポーツ団体の持つ法的組織の多様性、その内部統制原理に対する国家法やEU法の規律について、私法および公法の両面からの共同研究である。平成24年度は、1)EU法の下でのイギリスおよびドイツにおけるプロ・スポーツ組織の法的仕組み、2) ヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の利害対立、および、3) EU法の下でのヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の統治原理に研究の重点を置いた。 研究代表者・志谷は、すでに平成24年3月に、株式会社形態をとるイギリスのプロ・サッカー・クラブを研究対象として、団体内部の利害対立の深刻な法的様相を検討し、(志谷匡史、「プロ・スポーツ運営会社の経営危機対応」神戸法学雑誌61巻3・4号85~107頁、査読無、2012年。)にその研究成果をまとめ、公表していた。そして、その研究から得た知見を基礎に考察を深化させ、平成24年度において、株式会社経営者の経営裁量の範囲とその限界について、(志谷匡史、「経営裁量の射程-近年の裁判例を素材に-」商事法務1989号4-15頁、査読無 2013年。)にその研究成果をまとめ、公表した。 研究分担者・井上は、プロ・スポーツ団体内部の統治原理を公法の視点から解明する手がかりとして、憲法の規範を検証し、(井上典之、「適正手続・身体的自由権」辻村みよ子(編著)『ニューアングル憲法』 207~233頁、査読無、2012年。)にその研究成果をまとめ、公表した。さらに、EU・リスボン条約をスポーツ法の視点から読み解き、その成果を(井上典之(招待講演)、「リスボン条約とスポーツ法」EUIJ関西・夏季ワークショップ、大阪国際交流センター、2012年8月29日。)として公表した。 平成24年12月、志谷および井上は、ロンドンおよびブリュッセルにおいて、シンポジウム等に参加し、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度において、全体的な研究項目のうち、研究計画に記載した通り研究の重点を次の3項目に置いた。すなわち、1)EU法の下でのイギリスおよびドイツにおけるプロ・スポーツ組織の法的仕組み、2) ヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の利害対立、および、3) EU法の下でのヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の統治原理がこれである。 これら3項目について、ヨーロッパの企業法関連図書、ヨーロッパの団体法関連図書、イギリスのスポーツ法関連図書、および、ドイツのスポーツ法関連図書の購入を計画し、出版時期の遅れから購入できなかったものを除き、購入することのできた関連図書から知見を得ることができた。さらに、平成24年11月および12月には国内外の関係者や研究者との間で意見交換を行うことができた。 購入図書から得られた知見や他の研究者らとの間の意見交換をふまえて、研究代表者・志谷は、イギリスのプロ・サッカー・クラブにおける法的紛争事件を丹念に分析することにより、株式会社プロ・スポーツ組織の法的仕組みに内在する私法上の問題点を摘出し、裁判所による事案解決の衡平さを論証するとともに、さらに、視野を拡げて、株式会社の経営者に許されるべき裁量の範囲についての意義と限界を会社法の視点から検討することができた。 また、研究分担者・井上は、公法の視点からプロ・スポーツ組織を検討する立場から、EU法の下でのヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の統治原理について、憲法規範を確認する作業を丹念に行うとともに、EU法研究にとって極めて重要なリスボン条約を題材に取り上げ、公法の視点からスポーツ法全体を俯瞰するという研究成果を挙げることができた。 以上により、私法および公法の両視点から研究成果をあげることができたことから、平成24年度における研究計画はおおむね順調に達成できたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画は、研究計画書に記載した分担に従い、研究代表者・志谷は、ヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の利害対立と団体内部の統治原理ならびに団体頂上組織の位置づけについての私法的研究を行う。研究分担者・井上は、ヨーロッパ各国におけるプロ・スポーツ団体内部の利害対立と団体内部の統治原理ならびに団体頂上組織の位置づけについての公法的研究を行う。 具体的な研究計画は、平成24年度に得られた研究成果を基礎に、さらに引き続き1) プロ・スポーツ組織の法的仕組み、2) プロ・スポーツ団体内部の利害対立、および、3) EU法の下でのプロ・スポーツ団体内部の統治原理の3項目を取り上げ、その内容の研究を深める計画である。研究代表者・志谷は、特に上記3)の項目については、イギリスや他の諸国において株式会社を代表例とする営利企業として存立するプロ・スポーツ団体において内部統治の正当性保障のための制度的仕組みならびに団体頂上組織との関係について私法的観点から考察を加える計画である。また、研究分担者・井上は、ドイツを代表として同じく企業として存立するにもかかわらず、公益団体として活動する国のプロ・スポーツ団体においてその内部統治の正当性保障のための制度的仕組みならびに団体頂上組織との関係について公法的観点から比較検討を行う計画である。このように、研究代表者・志谷と研究分担者・井上は、協力してプロ・スポーツ団体内部、さらに団体頂上組織との関係性の両面において、プロ・スポーツ組織を法的に考察する計画である。 それと同時に、研究代表者・志谷と研究分担者・井上は、上記1)および2)の研究項目について、プロ・スポーツ団体内部の各種紛争の実態を、具体的に解明する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、本研究の内容をより深めるために、研究代表者・志谷と研究分担者・井上は、現地での関係者の意見聴取、資料収集の目的でイギリス、ドイツ等のEU関連機関に調査出張を行う。そこでの調査に基づき、1) プロ・スポーツ組織の法的仕組み、2) プロ・スポーツ団体内部の利害対立、および、3) EU法の下でのプロ・スポーツ団体内部の統治原理の3項目についての研究の取りまとめを行う。それと同時に、そこでの調査に基づき、平成25年度は、4)EU法の規律の下での国際的レベルにおけるプロ・スポーツ団体頂上組織の位置づけ、および、5)アメリカのプロ・スポーツ団体における統治原理とヨーロッパ・レベルのものとの比較の両研究項目についても研究を開始する。 そのために、平成25年度は、外国旅費を計上し、研究・調査出張のために必要な重要な外国図書を平成24年度に引き続き購入する。すなわち、平成25年度は、研究計画に従い、物品費として55万円、旅費として90万円、人件費等として5万円の総額150万円の研究費支出を予定している。備品としてヨーロッパ・金融サービス法関連図書、EU人権法関連図書、および、ドイツの基本法関連図書の購入費を計上する。また、現地での関係者の意見聴取、資料収集を目的とした海外出張旅費を計上する。 さらに、平成26年度は、本研究の最終年度として、残された研究課題の遂行と本研究の総括を行う。すなわち、研究項目のうち上記1から3については平成26年度の補足的調査を行った上で、これらの研究項目の取りまとめを行う。これに対して、上記4と5の研究項目については、平成25年度より取りかかることにする関係で、まだ不十分な部分が残ると考えられることから、そのために必要な関連図書の購入および海外への最終的な調査出張の実施を予定している。その上で、これら両項目について研究成果の取りまとめを行う。
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