2013 Fiscal Year Research-status Report
医療における患者の安全確保を実現化するための法制度に関する研究-北欧法からの示唆
Project/Area Number |
24530116
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
千葉 華月 北海学園大学, 法学部, 教授 (90448829)
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Keywords | 医療過誤 / 医療事故 / 医療安全 / 医療事故の予防 / 医療事故補償 / 苦情申立て / 北欧 / スウェーデン |
Research Abstract |
本研究の目的は、我が国の医療における安全を推進するための制度の在り方を考察することにある。そのために、本研究では、北欧、特にスウェーデンの医療安全のための諸制度の在り方や医療事故をめぐる法制度を検討し、医療事故の予防や医療における質の保証を実現するための施策を考慮し、具体的提言を行う。 2013年度は、研究実施計画に基づき、この問題に関する国内外の研究動向をふまえ、北欧の医療安全に関わる法制度を比較した上で、スウェーデンの医療安全に関わる法制度やそれを支える社会制度について検討した。 スウェーデンではじまった医療事故補償制度は、北欧諸国へと拡大し、北欧諸国は、医療事故に関して類似の制度を有している。医療者の過失を問わない医療事故補償制度の枠組みの中で、医療事故の原因解明と再発防止の取り組みが行われてきたほか、医療における苦情申し立て制度においても医療事故の抑止が行われてきた。 スウェーデンでは、2011年患者安全法が施行され医療苦情申立て制度は改革された。また、保健・医療サービス等における監督が強化されるべきとされ、2013年に医療・ケア監督庁が設立され、医療事故を取り巻く法状況は新しい局面を迎えている。 患者安全法では、保健・医療サービス提供者に患者安全に積極的に取り組む義務を課している。また、同法により、国民(患者)が医療に苦情がある場合には、原則としてすべての事案が医療・ケア監督庁に申し立てられることになった。医療者は、レックスマリア法に基づき、医療事故による深刻な傷害を同庁に通告することが義務付けられている。医療事故情報は医療・ケア庁に集約され、調査権限をもって原因分析が行われ医療事故防止の取り組みが行われている。改革により、医療者個人の責任は縮小され、医療機関の責任が拡大し、懲戒制度は、保護観察を中心とする制度になったが、同改革には批判もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は、2012年度に引き続き文献に基づく研究を中心に行った。スウェーデンでは、医療安全に関わる制度について改革が行われた。2011年に患者安全法が施行されたため、最新の状況を把握した上で同法の内容や問題点について検討することができた。医療安全において、新しい行政機関である医療ケア庁がどのようや役割を担うかについても調査することができた。また、医療における苦情申立て制度と医療事故補償制度の関係についても考察した。さらに、デンマーク、ノルウェー、フィンランドにおける医療事故補償制度と医療安全の制度についても比較検討できた。これらの研究成果は、学会誌等において論文を発表することができた。 しかし、2013年度は実態調査を行うことができず、改革後の実態を把握することはできなかった。これらについては、今年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、文献に基づく研究と北欧での実態調査を合わせて行う。 文献に基づく研究としては、北欧における医療安全の制度を比較検討した上でスウェーデンについて、①医療安全推進のための諸制度および②医療事故における医療者の責任を在り方についてさらなる検討を行う。 今年度予定している実態調査においては、法改革後の実態や問題点を把握し、医療・ケア庁の機能や役割についても調査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、北欧における実態調査を予定していたが、2013年度には調査を実施しなかったため次年度使用額が生じた。 スウェーデンでは、医療・ケア監督庁が2013年に設立されたばかりであり、2013年度の調査実施は時期尚早であり、2014年度の実施がより有益であると考えた。 本年度に北欧での実態調査を行う予定である。
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