2012 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク社会に適合したプライバシーの権利論の構築とプライバシー保護技術の活用
Project/Area Number |
24530118
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新保 史生 慶應義塾大学, 総合政策学部, 准教授 (20361355)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 個人情報 / プライバシー / クラウドコンピューティング / SNS / スマートフォン / ライフログ / ビッグデータ / 影響評価 |
Research Abstract |
ネットワーク社会に適合したプライバシーの権利論の構築とプライバシー保護技術の活用を目指す研究を実施した。 ネットワークの利用環境は、クラウド・コンピューティング、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)、コンシューマー・ジェネレイティド・メディア(CGM)ストリート・ビュー等の道路周辺映像提供サービス、スマート・グリッド、ライフログ、行動ターゲティング広告、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)をはじめとして、日々新たな技術開発とそれらを利用したサービスが提供されている。 さらに、スマートフォンの急激な普及に伴い、アプリケーションを介して様々な利用者情報が取得されており、それらの情報により個人の日常的な詳細な活動を明らかにすることが可能になっている。しかし、実際にどのような情報がどのように取り扱われているのか、利用者が十分に認識できない状況が存在することを指摘し、現行の法制度において、どのような利用者情報の取得が適法な取り扱いに該当し、違法又は不正な取り扱いとの境界について検討を行った。 これら、個人情報・プライバシー保護をめぐる新たな課題について、本研究では現状を把握するとともに新たな課題への対応方法ならびにプライバシーの権利の保障のあり方について研究を行った。また、プライバシー保護のための取り組みとして「プライバシー・バイ・デザイン」の意義と内容を明らかにするとともに、プライバシー影響評価(PIA)およびプライバシー保護技術(PETs)活用にあたっての具体的指標を示すに至った。 なお、当該問題を論ずるにあたって用いられる「ビッグデータ」という用語は「クリシェ(意味のない用語)」であると指摘し、ビッグデータ活用の名の下に違法・不正な個人情報の取り扱いが跋扈していることについて警鐘を鳴らす研究成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題抽出について、日々新たなネットワーク・サービスが提供されていることから、研究期間を通じて、それらのサービスの現状把握を行うとともに、サービスの内容や仕組みの検証を通じて、個人のプライバシーに与える影響を明らかにした。 ネットワークの利用環境は、ホームページを開設して情報発信を行うことが主たるインターネットの利用方法である初期の環境から、その後、いわゆる「Web2.0」と呼ばれる様々なサービスの展開へと移行してきた。さらに、CGMなど利用者自らが情報発信を行うことで成立するサービスや、クラウドなど文字通りヴァーチャルな情報の取り扱い環境が一般化しつつある。本研究期間内にも、日々新たなサービスが提供され続けることは明かである。よって、利用環境に関する現状調査に関する研究は、研究期間終了まで常に最新動向を把握する研究を行う必要があると認識している。 概念の明確化及び新類型の提唱については、新たな課題の抽出を行った上で、既存の学説及び判例の詳細な分析を行った。具体的な方法としては、(ア)法制度の調査について関連文献の収集分析を中心とした文献調査を行い、各国の関連組織から法制度に関する情報を収集した。また、(イ)諸外国のガイドラインの調査を行うことにより、法令に明確に定められていない事項についても、実施にあたってのガイドラインや評価結果など諸外国の公表資料を調査することで現行の制度について確認を行った。文献調査や公開情報の調査では実際の問題点を明らかにする上では限界がある部分については、各国のプライバシーコミッショナーをはじめとして、プライバシー保護に関する監督機関の担当者に国際会議の場などにおいて確認を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究においては、 (1)課題抽出について、(a)現状調査、(b)文献調査、(c)ヒアリングに関し、(2)概念の明確化及び(3)新類型の提唱に向けた研究を行うため、(b)文献調査、(c)ヒアリングを実施する。 なお、本研究の研究期間中に、社会保障・税番号制度の構築に向けた取り組みが実現する見通しであることから、(1)課題抽出については、プライバシー影響評価(特定個人情報保護評価)実施に向けて検討が必要な課題を重点的に調査し考察する。ならびに、本研究の研究過程において既に導入されている情報システムの運用に伴う諸問題を調査研究することはもとより、今後、導入が検討されている新たな情報システムのうち、個人のプライバシー保護の観点から影響度が高いと思料されるものについても、引き続きその導入・検討段階から調査を行い、当該情報システムを導入することで生じる可能性がある個人のプライバシー侵害の可能性や影響を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品等の発注において、研究計画当初の予定よりも安価に発注することができた ため、次年度に研究費を使用する。 (ア)学説・判例・法制度の調査について、関連文献の収集分析を中心とした文献調査を行う。第一義的には各国の関連組織から法制度に関する情報を収集するとともに、学説・判例についても、国内外のデータベースの利用を駆使して網羅的に文献調査を実施するが、必要な資料については文献を購入する。 また、(イ)諸外国のガイドラインの調査を行うことにより、法令に明確に定められていない事項についても、実施にあたってのガイドラインや評価結果など諸外国の公表資料を調査することで現行の制度について確認を行うが、同様に関係資料について文献を購入する。 (ウ)ヒアリング調査は、文献調査や公開情報の調査では実際の問題点を明らかにする上では限界がある側面を明らかにするために国内外において実施する。国外のヒアリング調査は、各国のプライバシー・コミッショナーをはじめとして、プライバシー保護に関する監督機関の担当者へのヒアリング調査を行うことで実状を調査する。そのために必要な当該ヒアリング調査のための旅費を支出する。 なお、研究成果の公表は外国語(英語)によっても実施しているため、作成した英文についてはネイティブチェックを依頼し英文校正を行う。
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[Presentation] Current Data Protection Developments in Japan2012
Author(s)
Fumio Shimpo
Organizer
CDT-GLOCOM Joint Workshop - A better policy environment for the innovative use of personal data, issues and views from the U.S. and JapanCenter for Democracy and Technology
Place of Presentation
Center for Democracy and Technology (CDT)Washington DC
Year and Date
20120914-20120914
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