2012 Fiscal Year Research-status Report
共通番号・国民ID時代におけるプライバシー影響評価に関する比較法的研究
Project/Area Number |
24530120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
村上 康二郎 東京工科大学, 教養学環, 准教授 (10350505)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プライバシー / 個人情報保護 / プライバシー影響評価 / PIA / 共通番号 / 国民ID / 番号法 / 情報法 |
Research Abstract |
本研究は、共通番号・国民ID 時代においてプライバシー影響評価(PIA)を導入・実施する際に生じる法的諸問題について、比較法的な観点から研究しようとするものである。平成24年度は、まず、我が国における問題状況の調査・検討を行った。我が国では、これまで社会保障・税番号制度に関する検討が進められ、近時、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(番号法案)が国会に提出されている。この法案では、諸外国において実施されているプライバシー影響評価に相当するものとして、「特定個人情報保護評価」が導入されている。そこで、同法案の成立過程やそれをめぐる議論状況などを調査し、検討した。また、本年度は、PIAの実施を法的に強制するのかどうかという規制方式の問題や、どのような情報システムないしプロジェクトをPIAの実施対象とするのかという実施範囲の問題を中心に検討を行った。その際、PIAに関する海外の論文・報告書や、各国のPIAに関するガイドライン、ハンドブックなどを調査した。そして、PIAについては、最近、ISOにおいて国際標準化の作業が進められていることが注目される。具体的には、ISO/IEC JTC1 SC27WG5において、PIAに関する国際規格の策定が進められている。研究代表者は、SC27WG5の国内委員として、PIAの国際標準の作成に関っている。また、このISOにおける標準化の動きと関連して、研究代表者が中心となって、情報ネットワーク法学会において、「プライバシー国際規格研究会」という名称の研究会を立ち上げた。今後の研究は、これらの動きも踏まえながら進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実施計画では、プライバシー影響評価(PIA)を日本に導入する場合の法的諸問題の整理、PIAの実施を法的に強制するのかという規制方式の問題およびどのような情報システムやプロジェクトをPIAの対象にするのかという実施範囲の問題に関する検討を行う予定であったが、おおむね、これらの調査・検討を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、プライバシー影響評価(PIA)の実施に第三者機関がどのように関るのかという問題を中心に検討を進めていく。その際、前提として、海外において、プライバシー・個人情報保護に関する第三者機関としてどのようなものが設置されているのかということを調査した上で、我が国においてどのような第三者機関を設置するのが望ましいのかということについて検討を行う。その上で、第三者機関がPIAの実施にどのように関るのか、第三者機関がPIAの承認権限を有することが望ましいのかといった問題を検討する。 さらに、これらの検討を踏まえた上で、PIAは何に対する影響を評価するものなのか、プライバシーに対する影響なのか、それとも個人情報に対する影響なのかといった問題や、プライバシー・個人情報保護制度全体をどのようにデザインしていくのかというグランドデザインの問題についても検討を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、研究図書の購入が予定より若干少なかったことがあげられる。また、初年度ということもあり、研究成果が学会発表の水準にまでは達しなかった部分があり、学会などへの出張を行わなかったため、旅費が発生しなかったことがあげられる。これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、研究図書の購入を増やすこと、学会への参加のための旅費に使用すること、海外文献の翻訳のための謝金として使用すること、などを計画している。
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