2014 Fiscal Year Research-status Report
地方財政自主権の強化と国家統合の相克―イギリスの領域政治を中心に
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24530123
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 幹根 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (30295373)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イギリス / スコットランド / 権限移譲 / 財政自主権 / 統治構造 / 独立運動 / 住民投票 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、2014年9月18日に実施されたスコットランドのイギリスからの独立を問う住民投票に至る政治過程をキャンペーン運動の動向を中心に考察し、財政自主権強化の是非、社会的シティズンシップをどのように一国全体として維持するのか、福祉国家体制の持続などの争点に焦点を当てつつ検討を行った。 具体的には、独立後のスコットランドが経済的、財政的に自立できるかに関して、独立後のスコットランドがその後もポンド通貨を使用し続けることの是非、北海油田から産出される石油・天然ガスの税収の見通し、独立スコットランドがEUに加盟する手続きなどが争点となったが、賛成、反対の両派は自己にとって有利な言説を展開し、議論は平行線のままであった。さらに、イギリスの福祉国家体制の根幹を成している公営保健医療サービス(NHS)を維持するための独立か、連合王国への残留かについても争点となった。 こうした争点に加えて、スコットランドにおける自己決定権の確立に対する態度表明が独立への賛否を左右した。すなわち、ロンドンの政府の統制に反対し、民主主義の欠陥を正すための選択肢として独立が支持された。 今年度の研究においては、独立議論の各争点そして現代イギリス政治の動向をいっそう理解するために、アバディーン大学のグラント・ジョーダン名誉教授(現代イギリス政治)、スターリング大学のポール・ケアニー教授(公共政策・スコットランド政治)と意見交換を行ったほか、独立運動に関わった関係者へのインタビューを行うことによって、文献やメディアの報道から得ることのできない多様な意見を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年9月18日に実施された住民投票に向けた政治過程を、地元紙や文献を通じて、主たる争点、独立賛成派、反対派の主張の背景を整理した。その中でも、本研究の中心的なテーマとなる財政自主権も大きな争点となり、独立国家としての財政的自立の考えと、連合王国の枠内に留まり現行の議会・政府に対していっそうの財政自主権を与える構想が、賛成の反対両派、各政党から提起されており、政策を具体的なレベルで把握し、検討することができた。また、住民投票に向けた選挙キャンペーンの動向を現地で調査し、また、専門家との意見交換を行うことにより、文献等の分析だけでは知りえないスコットランド政治に対する深い理解を得ることができた。さらに、14年12月には、スターリング大学のポール・ケアニー教授を招へいし、今次の住民投票を検討するセミナーとシンポジウムを東京および札幌で開催し、テーマを深く理解する機会を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である本年度は、実証研究、理論的検討の成果をまとめるために、特に、財政自主権の強化、住民投票キャンペーンにおける議論のなかで、いかに社会的シティズンシップの一体性、さらには福祉国家の枠組みが位置づけられるのか、その構図を明らかにする。また、2015年5月には下院選挙が予定されており、その選挙キャンペーンのなかでもこうした争点群が議論の対象となりうるため、引き続きその動向の把握に努める。 特に、地域政党であるスコットランド国民党(SNP)が昨年の住民投票以降も党勢を拡大させており、今後の展開に留意する必要がある。その際には前年度に引き続き、アバディーン大学のグラント・ジョーダン名誉教授や、ポール・ケアニー教授と意見交換を行う。なお、本研究で得られた研究成果は、学会発表、学内の紀要、あるいは学会誌への投稿という形で発信することに努める。
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Causes of Carryover |
今年度の研究においては、経費を効率的に執行することができたこと、さらには、研究計画作成当初に予想していた独立をめぐる住民投票を考察した文献・資料がイギリスにおいて余り刊行されなかったことから残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、独立をめぐる住民投票に関するイギリス政治の専門家らの研究成果が相次いで発表され、多くの文献・資料の刊行が予想されるため、これらを中心とした購入・複写に充当するとともに、2015年総選挙の後に予想されるスコットランド政治の変容を現地において調査するための経費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)