2012 Fiscal Year Research-status Report
生活をめぐる地域ガバナンスの比較研究―地域交通政策を中心に―
Project/Area Number |
24530125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
魚住 弘久 千葉大学, 法経学部, 教授 (60305894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東原 正明 福岡大学, 法学部, 講師 (00433417)
大黒 太郎 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (20332546)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地域交通 / 過疎 / 生活 / ガバナンス |
Research Abstract |
2012年度は本研究の遂行にあたって基礎となる現地調査を、①福岡県(5月)、②北海道(6月)、②オーストリア共和国(9月)、③島根県(10月)などで実施するとともに、福岡と千葉で研究会を行った。前半に日本で、後半にオーストリア・日本で調査した。 前半:①朝倉市役所において交通政策の具体的な取り組みについて説明を受けるとともに、第三セクター鉄道・甘木鉄道において鉄道経営と朝倉市の交通政策の関係・課題についてヒアリング調査を行った。②北海道庁総合政策部地域交通課及び北海道運輸局交通企画課において北海道の抱える交通政策の課題についてヒアリング調査をした。 後半:③オーストリア共和国では上記の調査から得られた日本の実情を念頭に置きつつ調査を実施した。ウィーン市とインスブルック市では、文書館を訪問し、交通を含めた地域住民の生活基盤に関わる政策資料の状況について調査した。さらにグラーツ市にあるシュタイアーマルク州交通連合では、交通連合の組織的枠組みや運営、地域交通を維持するための方策、EUの政策との関連などについて具体的かつ詳細なヒアリング調査を行った。ゲマインデでの調査は今後の課題である。④島根県庁において交通政策を含む過疎対策について説明を受けたほか、美郷町と飯南町でNPO関係者・自治体職員・議員から、過疎地域の交通政策及び過疎地域が抱える広範な課題とその克服に向けた取り組みついてヒアリングを行った。さらに、島根県中山間地研究センターにおいて調査を行い、本研究への大きな示唆を得ることができた。 各調査に関連して福岡大学と千葉大学で研究会を開催し、研究の方向性について議論を重ねるなどした。現在、一年目の成果として、メンバー全員で過疎地域の諸問題について共通の認識を持つことの重要性に鑑み、これまで国内で発表された重要な論考を整理・紹介するためのレビュー論文の執筆にとりかかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、次の5点を重点的研究計画として設定し、研究に取り組んでいる。①ドイツ(日本とほぼ同面積)における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、②オーストリア(北海道とほぼ同面積)における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、③アメリカにおける生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、④日本、とりわけ北海道における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、⑤地域交通を素材にした地域ガバナンスの国際比較(ヨーロッパ大陸とアメリカの比較と日本の状況)。 本年度の海外調査では、まず事前準備が比較的進んでいるオーストリアから調査をスタートさせる計画を立てた。9月に外務省在オーストリア日本大使館専門調査員としてウィーンで勤務した経験を持つ東原のネットワークを生かし、メンバー全員で現地調査を行った。この調査を通じ、メンバー間で比較の視座からの共通認識を深めると同時に、研究の枠組みについて具体的なアイディアを出し合うことができた。また、ドイツについても、現代ドイツ政治に多くの知見を有する大黒が予備調査を実施した。 国内調査については、日本の地域行政について研究を行ってきた魚住が自身のネットワークを通じて北海道調査を行ったほか、メンバー全員で福岡県朝倉市および島根県で調査を実施し、各地の交通政策の実態や、取り組みを確認した。さらに、各自で必要な調査を実施した。研究会は各調査に付随して実施し、メンバー間で活発な意見交換を行い、研究テーマについての認識を深めた。その際、過疎行政研究の第一人者である松野光伸福島大学名誉教授の研究協力が得られたことはまことに幸いであった。 本年度は、概ね当初の計画通り研究をスタートさせることができたと考えるが、今後、論文等の形で社会に発信していくことがより必要になるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度以降は、2012年度の調査・研究を踏まえ、研究を深めていくことになる。2012年度の研究が比較的順調に進んだと判断されることから、2013年度は引き続き、次の5点を重点的研究計画として設定し、研究を進めることとする。①ドイツ(日本とほぼ同面積)における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、②オーストリア(北海道とほぼ同面積)における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、③アメリカにおける生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、④日本、とりわけ北海道における生活をめぐる地域ガバナンスと交通政策、⑤地域交通を素材にした地域ガバナンスの国際比較(ヨーロッパ大陸とアメリカの比較と日本の状況)。 海外調査については、研究分担者がそれぞれ責任を持ってあたり、ドイツについてはさらに現地調査を行う計画を立てている。また、オーストリアについては、前年度の調査を継続し、不十分な点を補う予定である。アメリカでの調査については準備が整い次第、着手できればと考えている。 国内調査については、前年度にヒアリングに訪れた島根県中山間地研究センターにおいて研究合宿を行うことを予定している。同センターは社会科学の研究者が過疎研究に従事している全国的に見て稀有な存在である。ここを中心に、前年度ネットワークができた飯南町や美郷町といった過疎地域の様々な取り組みについて、本格的に調査したいと考えている。さらに、研究代表者が研究の基盤を新たに得た熊本においても過疎地域の公共交通の調査に着手できればと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究会の開催時に当てる予定で旅費を残していたが、諸般の事情で研究会を開くことができず、次年度使用額が発生してしまった。この研究費については、次年度使用額(旅費)として繰り越すことにする。
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