2012 Fiscal Year Research-status Report
保守一党支配体制と1970年代の危機:日仏伊三カ国の比較分析
Project/Area Number |
24530129
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90242065)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 憲 千葉大学, 法経学部, 教授 (40211726)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 一党支配体制 / 1970年代 / 日本 / フランス / イタリア |
Research Abstract |
日仏伊の戦後保守一党支配は、70年代前半の共通の危機(労働者・学生の運動と石油危機)に対して異なる対応を示し、その結果、80年代以降、別々の道を辿ることになった。本研究はこの70年代の分岐、特に①なぜフランスで保守支配が早期に終焉したのか、②なぜ自民党支配だけが徹底的に合理化され、93年の破綻を乗り越えてなお存続する程の強靭さを獲得したのかを説明することを目指す。 平成24年度には、まず、研究の軸となる3つの領域(公的投資資金の枯渇と地方財政危機への対応、地方レベルの党派ネットワークの変容、議員団の内部構造の変動)について、三カ国に関する既存の研究をサーベイし、作業仮説を構築する作業を進めた。 次いで、こうして形成された仮説群を踏まえて、フランスについては中山が、イタリアについては石田が、それぞれ現地調査を実施し、パリ、ローマなどの公文書館などにおいて、主として1970年代の地方財政危機などに関する資料収集を行うと共に、現地研究者との意見交換を行った。 帰国後、各自資料の分析を進め、作業の進行状況と成果を共有した。フランスについては、既にその成果の一部は、9月にパリのCDC(預金供託金庫)で開催された研究会で報告した仏文ペーパーにも反映されている。 70年代の地方財政危機が、地方に対する公的投資資金の配分のパタンに急激な変化を齎したのは三か国に共通だが、地方財政危機をいかに収拾したかについては、仏伊間には財政規律の貫徹/弛緩という鮮やかな対照が見られ、資金配分のパタンへのインパクトも大きく異なっていたことが実証的に跡付けられた。一次史料が比較的乏しい日本については、二次文献を中心に、こうした仏伊の対照の中に位置付ける作業を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存文献のサーベイと作業仮説の形成という課題については、本研究の扱う領域が広大であるため、なお継続中である。とはいえ、この作業は元々、1年で完全に終わらせることを当初から想定しておらず、資料収集作業を枠付ける仮説の基幹部分に見通しを付けることができたので、初年度に予定した目的は達成できたと言える。この作業の成果をまとめたペーパーも準備が進んでいる。 70年代の地方財政危機の展開に関するフランス、イタリア現地での資料収集は、有益な文書史料に行き当たる幸運にも恵まれ、上記のように、仏伊については、作業仮説に一部実証的な根拠を見出すに至るという、想定以上の成果を挙げた。 他方、日本に関する資料収集は遅れ気味であるが、アクセス可能な一次史料が限られていることは当初から想定済みでもあり、次年度で挽回できる程度と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
地方財政危機の展開とその背景については、初年度で概ねその大枠を把握できたので、次年度(平成25年度)は、予定通り、地方(大都市や県)のケーススタディに調査と分析の焦点を移す。 比較分析の作業仮説を検証するのに適切と思われる地域(県や大都市など)を各国について5~6程度選定し、それぞれについて、まず既存の研究のサーベイ、次いで現地での資料調査と分析を行う。 初年度の成果を踏まえ、各都市・地域における地方財政危機の展開を追いかけつつも、予定通り、第2の研究領域である地方レベルの党派ネットワークの変容に調査・分析の焦点を移す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、三カ国に関する既存研究のサーベイにおいて、それぞれの所属大学の図書館の蔵書に予想以上に頼ることができたこと、フランスでの現地調査が若干短めとなったことによって、20万余を次年度に使用することとなった。 次年度(平成25年度)には、地方の都市や県のケーススタディに焦点が移るため、図書の購入件数は増え、現地調査(中山がフランス、石田がイタリア)の日程も長くならざるを得ないため、今年度よりかなり多い研究費が必要になると考えている。
|