2013 Fiscal Year Research-status Report
保守一党支配体制と1970年代の危機:日仏伊三カ国の比較分析
Project/Area Number |
24530129
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 洋平 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90242065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 憲 千葉大学, 法経学部, 教授 (40211726)
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Keywords | 一党支配 / 1970年代 / 日本 / フランス / イタリア |
Research Abstract |
日仏伊の戦後保守一党支配は、70年代前半の共通の危機(労働者・学生の運動と石油危機)に対して異なる対応を示し、その結果、80年代以降、別々の道を辿ることになった。本研究はこの70年代の分岐、特に①なぜフランスで保守支配が早期に終焉したのか、②なぜ自民党支配だけが徹底的に合理化され、93年の破綻を乗り越えてなお存続する程の強靭さを獲得したのかを説明することを目指す。 平成25年度には、まず、前年度に引き続き、三カ国に関する既存研究のサーベイを続け、前年度の現地調査などの成果を踏まえた作業仮説の修正作業に反映させた。 その上で、第2の領域である地方レベルの党派ネットワークの変容に実証研究の力点を移し、イタリアについては石田が、フランスについては中山が、それぞれ現地調査を実施し、議員・政党や地方自治体の史料の掘り起こしに努めると共に、現地研究者との意見交換を行った。帰国後、各自資料の分析を進め、作業の進行状況と成果を共有した。フランスについては、既にその成果の一部は、現在、印刷ないし執筆中の中山の論文(仏文と和文)にも反映されている。 この領域に関する実証作業はなお継続中だが、仏伊の位置付けについては、一定の実証的根拠を持った見通しを得ることができた。70年代の地方財政危機とこれに伴う補助金などの削減によって、「利益誘導」によって構築されていた各党派のネットワークが弛緩し混乱したことは共通であるものの、仏伊間には財務官僚制の統制の強さと、資金配分の集権性に大きな差異が見られたため、その帰結も全く対照的なもの(仏:与党のネットワークの解体、伊:集権化・再編された上で膨張)となったのではないか、というものである。一次史料の乏しい日本については、二次文献を中心に情報を収集し、研究協力者の伏見岳人の助言を受けながら、対照的な仏伊の中間(混合)事例として位置付ける方向で分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要な課題である地方レベルの党派ネットワークに関する分析は、現地での史料調査の準備に予想以上の時間を要したため、現在もなお作業が進行中である。この作業は、複数の地域を対象に同時並行的に進めねばならないため、史料収集もその解析も膨大な時間を要する。そのため、要求される密度の情報を今年度だけで収集し分析を終えることは当初から想定されておらず、上記のような日仏伊三カ国の布置連関に大まかな見通しをつけることができた時点で、今年度に予定した目的は概ね達成できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(平成26年度)は、上記の地方レベルの党派ネットワークに関する実証分析を続行しつつも、予定通り、中央における議員団の構造変動の分析へと作業の中心を移す。この第3の領域については先行研究が比較的手厚いため、二次文献の解析の比重が重くなるが、これを補填するために現地での資料調査も行う。併せて、過去2年度に進めた他の2つの領域に関する補完調査も実施し、3つの研究領域の間の相互作用を十全に明らかにするよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、三カ国に関する既存研究のサーベイにおいて、それぞれの所属大学の図書館の蔵書に当初の想定以上に頼ることができたこと、前記の理由により現地での調査日程が若干短めとなったこと、などのため、90万余を次年度に使用することとなった。 次年度(平成26年度)には、3つの領域に関する調査・分析を平行して進めることになるため、図書の購入件数のみならず、現地調査(中山がフランス、石田がイタリア)の回数や期間も大幅に増え、今年度より遥かに多くの経費が必要になると考えている。
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