2014 Fiscal Year Research-status Report
タイ王室の政治的役割の変化:カンボジア及びマレーシアとの比較研究
Project/Area Number |
24530130
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
浅見 靖仁 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (60251500)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タイ / マレーシア / カンボジア / 王室 / 王政 / 国王 / プーミポン / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月25~30日、6月20~26日、8月14~23日、12月4~6日の4回の現地調査をタイで行った。王室の動向に詳しい元上院議員や国王の侍従医の旧友、クーデター後に行われた反軍政デモ参加者などを対象に聞き取りを行った他、国立図書館やラーマ5世博物館、ラーマ7世博物館などで文献調査も行った。また8月の調査では平成25年度に引き続き、ターク県で一般住民を対象にした聞き取り調査も行った。12月の調査では、国王誕生日祝賀行事を王宮内で見学することもでき、皇太子が儀式を行う様子やそれを見守る各層のタイ人の様子などを間近に観察することができた。 6月26~28日には、マレーシアのクランタン州コタバル市を訪問し、タイのパタニー県、ナラティワート県、ヤラー県から亡命しているマレー系タイ人の指導者に面会し、彼らのタイの王室とマレーシアの王室に対する見方についての聞き取り調査を行った。 7月末に明石書店から出版された『タイを知るための72章』の「第5章 タイの政治風土:「自由」の希求と都市と農村の亀裂」及び「第62章 タックシン・チンナワット:稀代の政治家の分かれる評価」において、タイの都市部と農村部における王室イメージの違いやタックシン元首相と王室との複雑な関係について論じることによって研究成果の一部を発表することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初の予定通り、現地調査をタイで4回、マレーシアで1回行うことができた。5月にはタイでクーデターが起き、10月にはタイの国王の病状の一段の悪化、11月には皇太子の側近をめぐるスキャンダルの発覚と皇太子妃との離婚などがあり、タイの王室をめぐってさまざまな言説が噴出するようになり、聞き取り調査は大きな成果をあげることができた。また文献調査についても、ラーマ7世博物館で新たな重要な資料を見ることができた。カンボジアとマレーシアの王政については、二次資料が中心ではあるものの、文献を読み進めることができた。 またヨーロッパの王政を研究した文献も読むことによって、本研究が目指す比較王政論の理論的枠組みの構築に関しても大きく進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本研究プロジェクトの最終年度にあたるため、現地でのフィールド調査や文献調査を引き続き行うと同時に、研究成果を発表するための論文の執筆や学会での発表にも力を入れる。7月11-12日に東京学芸大学で行われる日本タイ学会の第17界研究大会で発表を行うほか、12月にはトルコのイスタンブールで行われるPOLITSCI '15 - Power and Resistance: Current Debates and Historical Backgroundという国際学会において研究成果を英語で発表する予定である。 現地でのフィールド調査については、本年度はタイとカンボジアで行い、調査で収拾した情報のデータベース化も進める。平成27年4月から勤務先が一橋大学から法政大学にかわったことにより、これまでこのプロジェクトの研究成果を掲載していた一橋大学のサーバを使うことができなくなってしまったが、本年度中に法政大学でも研究成果をインターネット上で公開するための環境を整備する。
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