2014 Fiscal Year Research-status Report
政府能力・統治制度と所得再分配との関係をめぐる比較政治学的研究
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24530131
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
桐谷 仁 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30225106)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 所得再分配 / 社会協定 / コーポラティズム / 政府介入 / 社会民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず第1に、昨年度に続き、近年の社会協定や政策協調の各種の議論を踏まえて、政労使間の社会協定や政策協調やパートナーシップ等についての資料や報告を収集しつつ、その実態を踏まえて、概念的に明晰化を試みた。 第2に、そうした社会協定等々の観点を取り入れながら、あらためて、政府介入の諸々の役割と機能について再検討した。そのなかから、政府介入の機能のもつ実質的側面と形態的側面とを区別して理解したほうが、政府介入を明確に概念化できるのではないかと考えた。というのも、従来の政府介入をめぐる議論では両者が混在したかたちで、国家の強さが論じられる傾向にあったと思われたからである。さらに、前者の機能は政府の合意調達能力に、後者は政府のアリーナ設定能力にそれぞれ依存することを提起しするつもりであるが、まだそれは、成果としては試論の域を出ておらず、今後、精緻に議論する必要があるといえる。 第3に、従来のOECD諸国の政府介入をめぐる論者の経験的指標化についても検討し、再指標化を試みた。そのうえで、新たな代替指標を適用して1960年代以降の主要OECD諸国の政府介入の動向を観察してみると、政府介入は、70年代の二度の石油危機を境に単純に減少傾向を示すというよりも、90年代になると増加するなど複雑な様相を呈していることが索出された。 第4に、所得再分配に関してであるが、主要OECD諸国における年齢別とくに高齢者等を含めた各種データを入手・分析し、当初所得の格差が、政府介入を通じて縮減するのかについて観察してみると、北欧の社民コーポラティズム型における再分配能力が高いなど、各類型間での差異が顕著であり、多様性が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1に、各種のデータや資料の収集・整理と分析、とくに社会協定やパートナーシップに関する多様な論考や報告の収集と分析に手間をとったことである。第2には、比較の適切な分析手法の模索や、その暫定的な分析結果の政治学的含意を明確にするのに時間を要したからであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、最終年度であるので、これまでの作業の速度を上げて、これまで試論や暫定的なかたちにとどまったものを、整序しつつより体系化していく方向でまとめていきたい。
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Causes of Carryover |
昨年度(平成26年度)において、本研究の重要課題である政府能力に関連した「社会協定」をめぐる報告・資料等について海外調査を敢行し、それを踏まえて本課題の報告書を作成する予定であったが、さらなる補充調査が必要であると判明した。したがって昨年度は、計画を変更して、その調査に向けての論点等の整理を行うこととしたため、未使用額が生じ、次年度使用額が生じた次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由により、本年度は、補充調査のための海外調査の経費として使用する計画である。
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