2012 Fiscal Year Research-status Report
マルチレベルの政治制度とその政治的帰結に関する比較研究
Project/Area Number |
24530134
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
建林 正彦 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30288790)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 政党 / マルチレベル / 政治制度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マルチレベルの政治制度の組み合わせがもたらす政治的帰結について、日本とイタリアとの比較研究を通じて明らかにすることである。民主主義国家において同一の住民、地域を管轄する統治機構は、基礎自治体、県・州政府、中央政府、超国家政府(EUなど)というように多層化しているが(このことを本研究ではマルチレベルの政府と呼ぶ)、各レベルの政治制度は、相互に関連しあい、他レベルの政治的帰結に作用する。マルチレベルの政治制度とそれによってもたらされるマルチレベルの政治ゲームの相互作用を射程に入れることで、政治制度と政治的帰結の関係をより包括的に、動態的に明らかにすることが本研究の課題である。 このような研究目的に照らし、24年度には、本研究課題の先行的な研究となる、「現代民主政治と政党組織の変容に関する研究(基盤研究A)」(平成21年度~23年度)の研究成果の公表をめざし、論文執筆を行った。具体的には、日本の都道府県議会議員に対するアンケート調査の分析を行い、地方レベルの選挙制度と執政制度が、地方議員に国政レベルの有力政党からの自律性を与え、逆に知事個人から規律を受ける対象とすることを明らかにした。またその過程で本研究の理論的枠組みの精緻化を行った。 イタリアについては5ツ星運動にかかわる活動家に対して聞き取り調査を行い、地方レベルの政治動向が中央レベルの政党政治に強い影響を及ぼしうること、そうした動向の顕在化過程において、既存政党への不信、政党によらない民主政治への期待という、日本と類似した現象がみられることが確認され、今後の比較研究への糸口を見出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルの検討、精緻化については、予想以上の進展を見た。ヨーロッパでもマルチレベルの政治文脈の中で政党を位置づける研究が進行中であることは、本研究の計画段階から明らかであったが、ヨーロッパの政治学における研究が、徐々に成果として結実し始め、そうした諸研究を参考にすることで、本研究の理論枠組みについてもより具体的なレベルのものとして検討することが可能になった。 他方、イタリア地方政治の調査については、5つ星運動への聞き取りを行うなど、新たな調査の端緒をつかむことはできたが、選挙等のタイミングとも重なり、当初計画していたほど十分な調査を行うことはできなかった。 理論的な検討は大きく進展したが、実態調査はやや遅れ気味であり、全体としてはまずますの進展度ということができるかと思量する。
|
Strategy for Future Research Activity |
イタリアにおいてマルチレベルの政治制度の組み合わせが政党政治にどのような影響を与えるかという点について、さらに調査を進め、実証的な日本とイタリアの比較分析へと結び付けていきたい。具体的には、24年度、選挙との日程の関係で実現できなかったプーリア州で聞き取りを行い、知事候補の予備選という制度が、政党組織にいかなる影響を及ぼし、国政政党の組織動員力をいかに毀損するかを分析する。さらに北部の右派政党についても、地方政治のメカニズムが国政レベルの政党政治に及ぼす影響について、考察を加えたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プーリア州、あるいはロンバルディア州での聞き取り調査を、研究会など、事前の準備を経たあとに実施し、地方政治が中央の政党政治に及ぼす効果について、調査分析する。理論モデルについては、日本を事例とした研究からすでに大きく進展しているところであるが、比較政治のモデルとしてより有効なものとするために、さらに検討を加える。後者については通常の文献研究を行い、場合によっては日本の地方政治の事例研究、都道府県議会議員調査データの再分析を行うことでこれを補足する。
|