2012 Fiscal Year Research-status Report
明治期府県会の制度的断絶と議員属性の変化:名望家の政治的忌避と府県会の政党化
Project/Area Number |
24530138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森邊 成一 広島大学, 社会(科)学研究科, 教授 (50210183)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近代日本政治史 / 府県議会 / 名望家 / 政党化 |
Research Abstract |
平成24年度は、基礎的な資料の全国的な編纂状況を確認し、いくつかの府県について仮設的なデータ集計を行い、全国的なデータの集計・整理のためのフォーマットの作成を行うべく研究を進めた。 その結果、1.全国的には、各都道府県の議会事務局が、早くは、1950年代のはじめから議会史の編纂を開始し、50年代前半(1950~54)に15都道府県が議会史の編纂刊行を開始し。50年代後半に8府県、60年代に10県、70年代に10県、80年代に3県、90年代に入って奈良県と続いた。50年代の多くの議会史は、戦後地方自治法施行後の議会の活動を跡づけるものが、殆どであるが、一部に明治期からの歴史を記述しようとするものもある。また、既に戦前から、府県会史または県会沿革史というタイトルで、議会史が刊行された府県が15府県にのぼり、明治32年の府県制全部改正を受けて、それ以前の府県議会史を記録しようという試みが始まっていることが分かった。 一般に、府県議会は、明治11年三新法体制下の「府県会規則」、明治23年「府県制」、明治32年全部改正後の新「府県制」という三回の制度的変更を経験した。しかし、明治23年府県制、これによる郡・市議会による府県議員の間接選挙(「複選制」)は、東京・大阪・京都の三府、神奈川・岡山・広島・香川の四県で、郡の統廃合が進まないなどの理由により、ついに施行されることがなかった。この7府県では、府県会規則に基づく地域の公民による直接選挙が、この間も続いたのである。したがって、この7府県と他の(北海道・沖縄を除く)38県の、明治23年~32年(実際には、施行期間は県により異なる)の間の議員属性や活動にどのような違いがあるのか、明らかにする必要性が、研究を通して、自覚されてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの達成度は、やや遅れ気味である。全国的な府県会議員の辞職率-任期満了率、再選率、新人当選率、政党所属率、その他議員属性のデータを集計するために、仮設的な集計作業を愛知県、広島県に続いて、千葉県、和歌山県などで行ったが、未だ、確定的な集計フォーマットを作成できないでいる。明治期の府県会議員は、予想以上に、多数の議員が中途辞職しており、補欠充当された議員もまた中途辞職するなど、議員個々人の異同それ自体を確定するのに、時間がかかっているからである。例えば、広島県では、明治12年初当選組で、籤により1年後の半数改選の対象とならなかった、3年間の任期を与えられた議員30名中、3年の任期を全うしたものは12名(40%)にすぎず(辞職率60%)、さらに再選したものは、6名(20%)に過ぎないのである。 また、議員の交代の理由で、辞職とともに、死亡者も少なからず居る。しかしながら、一部県議会史においては、交代の理由を死亡や辞職と明記せず、交代の理由を明らかにすることが出来ないものもある。辞職率を集計したいわけだが、死亡と区別できる場合と出来ない場合がある中で、これをどういう形で集計するか、検討中である。また、警察資料などで、明治20年代以降、議員の政党所属または提携関係を確定できる地域とそうでない地域があり、全体としてこれをどう処理するかについても、検討している状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、引き続き、各府県議会の議員データの集計を行いつつ、データを比較可能にするためのフォーマットの確定に努めることとする。 その際、1.主に西日本(近畿以西)の各県のデータの集計、分析を、明治年間全体にわたって行う。加えて、明治23年府県制が施行されなかった。関東に属する神奈川のデータも集計することで、明治23年府県制による被選出議員と、旧府県会規則によるそれと比較を進める。 2.各県会についての議員データベースを作成するとともに、各県会の①辞職率・再選率、②選挙データから前職・元職・新人の別を明らかにし、③政党会派所属データから政党化率について、総括表を作成する。これを通じて、党派性が、議員の長期在任を促しているかどうか、確定する。 3.これに加えて、議員の氏名と、『全国資産家地主資料集成』等に掲載される職業(地主的土地所有・会社役員)データとをつきあわせることで、明治府県会議員の社会的属性についても、可能な限り特定する。 4.各県の県政界について叙述した書物等から県議会活動の実体の一端を確認し、得られた数値データ等とつきあわせることで、当該県のデータの特性を説明する何らかの新たな知見がないか確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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