2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530139
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 俊道 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80305408)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文明 / 帝国 / ポーコック / アイルランド / スペンサー / ブリテン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度も引き続き、初期近代ブリテンにおける「文明」と「帝国」をめぐる政治思想の研究を行った。本年度はとくに、学会や研究会、あるいはケンブリッジ大学等での資料調査・収集などを通じて、国際政治思想史やブリテン史、あるいはアトランティック・ヒストリーといった各分野の研究成果を摂取するとともに、初期近代における宮廷と帝国を舞台とする「シヴィリティ」の言説の歴史的な展開について知見を深めた。 前者については、ポーコック以来のブリテン史研究、アーミテイジの近代国際政治思想研究、Dandeletによる初期近代帝国思想研究といった最新の研究成果に加え、アイルランドとアメリカをともに視野に収めるクインやキャニーらの先行研究を検討した。その成果の一部は、『イギリス哲学研究』第38号に掲載されたポーコック『島々の発見―新しい「ブリテン史」と政治思想』の書評や、押村高編『政治概念の歴史的展開』第7巻所収の「外交」に反映されている。 また、後者については、一橋大学哲学・社会思想学会において「宮廷と帝国―初期近代ブリテンにおける「公共性」の原像」と題する報告を行った。この報告においては、人文主義や文明の作法に関するこれまでの研究に加え、宮廷と帝国(アイルランド)をつなぐ人物として、新たにルネサンス期のゲイブリエル・ハーヴィー、トマス・スミス、エドマンド・スペンサーに着目した。そのうえで、彼らが展開した作法論やアイルランド植民論・改革論における、古典古代やマキァヴェッリなどに由来する人文主義の強い影響と「シヴィリティ」の概念の重要性が確認されるとともに、それらが、ブリテンという「文明の帝国」の形成に寄与していたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はとくに、初期近代のアイルランドとアメリカ植民地へと研究の対象を拡げたが、先行研究の蓄積と一次資料の数が予想以上に膨大であることが判明したため、それらの調査と収集、および消化吸収に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の資料調査と収集作業を継続するとともに、これまでの研究成果をまとめ、刊行が予定されている単著『帝国とコモンウェルス(仮)』(風行社)の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
洋書を注文したが、発行が予定よりも遅れ、年度末までに納入されなかったものが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に納入されなかった書籍を改めて購入する。
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