2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の医療政策概観:福祉国家研究における特異な政策領域として
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24530141
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
宗前 清貞 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50325825)
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Keywords | 戦後医療史研究 / 福祉レジーム論 / 医療政策 / 医療供給体制 |
Research Abstract |
当該年度においては前年度に引き続き戦後期の医療供給体制がどのように進展したかについて二次文献や新聞記事(医療業界新聞等を含む)に基づく整理を行った。特に本研究の柱の一つである復帰前の沖縄における医療に関する資料を収集したが、このことで医療体制が異なった権威(日本国政府と琉球政府)の元でゆっくりと形成されていく過程を比較する視座を得ることができた。 沖縄の場合、戦前において中産階層以上を対象とする自由診療が中心であったが、戦禍を経て急激に公的医療機関中心の医療体制に転換し、そのことに対して一定の抵抗があったものの、医療資源自体が極端に欠乏している状況がそもそも本格的な抵抗を許さず、加えて戦後の医師がa)高度な大学教育を一律に受けていることB)政府立病院での研修医生活を共有するなど、体系的な実地訓練を経ていること、C)そもそも戦後に教育を受けた医師の数が圧倒的に多く、そうした対立が沖縄の医療界において主たる断層たり得なかったことなどを理由として、戦後教育を受けた医師を中心とした医療体制が構築されていったことを明らかにしている。 また、二本の論文公刊(別掲)、二度の研究会報告を経ることで、本研究の基調である戦後日本政治の進展と医療供給体制の構築の関係について再確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画と比較して、想定したような均等な進展は見せていないが、昨年度に関しては沖縄の医療動向については想定よりも深い理解が得られている。また、質の高い発表媒体を得てこれまでに得た知見の一部を開陳する機会があり、全体像を失わずに研究が進展していると言ってよい。また、この研究自体に対する学界内部の認知度も高まっており、そのことは研究を推進する有形無形の支援を得ることに繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
特に大きな変更はないが、単著という形で成果を公表するべく、医師養成や戦後の病院整備計画などについてより一層精度の高いデータを収集し、またそのことを論文ないし著書としてまとめる準備に入る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全体的に経済的な物品購入を心がけており、インターネット資料の活用等によって大幅に節約ができていること、また琉球大学附属図書館の開館時間が長くなり、一回の出張による資料収集の効率が向上していること、現在の本務校が提供する機器購入予算によって、当初科研費で購入予定だった物品が一部購入できていることなどが想定よりも支出が抑制された主たる原因である。また3月に実施した出張(2回、約15万)は、本学経理の都合上、2014年に精算されている。 以上のような事情で若干の繰り越しが生じたが,実質的には計画と予算執行の間にほとんど問題となる乖離がなく、今後も予定している研究の進展に沿って適切な予算執行を実施したい。
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Research Products
(4 results)