2012 Fiscal Year Research-status Report
シンガポール共和国の「裏」憲法と政治秩序―治安維持法の分析を中心として―
Project/Area Number |
24530142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
板谷 大世 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (80264919)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シンガポール / 英国 / 植民地 / 治安維持法 / 憲法 / 帝国主義 / 共産主義 / 社会主義 |
Research Abstract |
平成24年度(2012年度)は、国内において先行研究の分析を行う一方で、二度の海外調査を行った。こうした活動から得られた知見、課題について簡単に報告する。 研究計画書にあるように本年度においては、「非常事態令(Emergency)」、公共秩序維持条令(PPSO)、国内治安法(ISA)の制定背景を分析するための資料の収集と分析を行った。国内においては国内で入手可能な書籍および論文を利用する調査を行う一方、海外においてはシンガポールの国立文書館、国立大学図書館などにて一次資料の閲覧と複写を行った。また、英国においては国立文書館などにて文献複写を行った。こうした作業によって本研究計画の今後の課題が浮き彫りになってきた。 本研究をさらに進めるためには、国内治安(Internal Security)の概念をより多角的に分析しなければならない。治安とは言うまでもなく、現行秩序が侵されないように、または損なわれないようにして、現行秩序を維持する活動を指す。先に挙げた法令はすべて、現行秩序を維持するために、秩序を破壊しようとする人物・団体の「排除」を目的としている。しかし、本研究計画を推進するためには「排除の論理」の検討だけでなく、「包摂の論理」すなわち、「現状を肯定する論理・社会の枠組み」の検討が必要であるとの認識に至った。そこで、平成25年度(2013年度)においては、先の条令だけに注目するのではなく、同国における脱植民地化の過程で制定された、憲法の背景にも注目したい。なぜならば、憲法に注目することによって、「現状を肯定する論理・社会の枠組み」を探ることができると考えるからである。 最後に本年度の研究方法についてであるが、昨年度のシンガポール調査においてシンガポールにおける必要な資料はかなり収集することができたので、本年度は英国文書館であの活動に重点を置くこととする。 以上
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画が遅れている理由は、英国において入手した資料の整理に手間取っているからである。 本研究計画では、シンガポールおよび英国において資料収集を行うことを予定していたが、昨夏に実施したシンガポール調査結果の分析はほぼ予定通りに進んでいる一方で、英国における調査結果の分析がやや遅れている。その理由は、シンガポールでの調査は昨夏に行ったのに対して、英国での調査は年度末(3月)に行ったからである。そのため、シンガポールで入手した資料整理は計画通りに進んでるのに対して、英国での調査結果の整理は昨年度においてはほとんど出来なかった。 このように、研究が遅れている理由は時間的な制約によるもので、研究計画内容の不備・欠陥によるものではないので、研究計画を遂行する上での致命的なものではないと認識している。 本研究の達成度について以上の通り報告する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では海外調査先としてシンガポールと英国を挙げていたが、昨年度の調査の結果、シンガポールにおける資料収集は予定通りに進んでいる一方で、英国における調査がやや遅れている。 このため、予算的な制約はあるが、来年度はシンガポールへの調査旅行は計画通り1回行う一方で、英国へは2回の調査旅行を行うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度も研究計画にあるように、海外調査を中心に研究を進める。そのため、来年度の研究費の使用予定は以下の通りである。 シンガポールでの海外調査費用 100,000円 英国での海外調査費用 300,000×2回=600.000円 合計700,000円 以上
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Research Products
(1 results)