2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530144
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (50453452)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ベルギー / 連邦制 / 民族対立 |
Research Abstract |
本研究は、近年のベルギー政治の不安定化の要因が、93年に導入された連邦制度にあるとみて、その制度の特性を、25年にわたる改革の政治過程を検討することによって考察しようとするものである。 計画では理論的な分析枠組みの検討時期であった。題材として、時代をさかのぼり、90年代のベルギー政治を用いながら分析枠組みを検討した。この点では、分析枠組みの策定までは進められなかったが、史料読解を通じて、80年代から90年代のベルギー政治に、現在の混乱の重要な起源があることを発見できた。2000年以降のベルギー政治にばかり注目していた申請者にとって、これは大きな発見であった。つまり「80年代末から90年代にかけての一連の出来事(オーガスタ・スキャンダル、デュトルー事件、サベナ倒産)が『国家』のあり方に疑義を提起し、国民の間の『ベルギー』という国家への疑義を強くした」というものである。これはその時期の国家改革(連邦化)自体への疑義にも通じる。すなわち、「意図せざる結果」、つまり「連邦制導入の誤算」の背景には、そもそも導入時に政治不信が蔓延していたことを意味する。この点は新しい知見である。以上の知見をもとに、学会報告②、学術論文①を得た。また本年の比較政治学会でもその成果の一部を報告予定である。 また分析枠組みについては、試験的ではあるが、デスハウアーのモデルなどから作った枠組みを用いた分析を、昨年の比較政治学会で発表している(学会報告①)。 さらに、8月にデミトリ・ヴァンオーヴェルベケ教授(ルーヴェン大学)ご指導のもとで、現地で下調べ的に70年代以降の外交(旧植民地)政策について調べていたが、これがもとになって、著作①を得たのは幸いだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、近年のベルギー政治の不安定化の要因が、93年に導入された連邦制度にあるとみて、その制度の特性を、25年にわたる改革の政治過程を検討することによって考察しようとするものであり、計画では理論的な分析枠組みの検討時期であった。比較政治学会で報告した通り、分析枠組みにはデスハウアーの「多層化したアクター」の分析枠組みと、社会学の「情報の非対称性」モデルを用いたが、さらに連立モデルとの接合が求められる。この点は若干遅れた。しかし90年代のベルギー政治を用いた知見をもとに、いくつか成果を公開できたので、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
時期をさかのぼりながら、史料読解を進める。主に70年代、80年代になる。 同時に、ここまで検討してきた分析枠組みを連立形成モデルと接合させることが中心的な課題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に連立形成モデルについての最新書の入手のために用いる。 また、70年代の史料については、必要に応じて現地等で入手することになる。
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Research Products
(4 results)