2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530144
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
松尾 秀哉 聖学院大学, 政治経済学部, 教授 (50453452)
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Keywords | 国際情報交換 ベルギー / 連立形成モデル / ポピュリスト政党 / 国王の政治的機能 |
Research Abstract |
本年度は、ベルギーの連邦化の政治過程を検討した。前年度は主に90年ー93年(連邦化)までに注力したが、本年度は70年から88年までの三回の憲法改正の連立交渉、政党間関係を、ベルギーでの一次資料調査を含めて検討した。 この時期ベルギーでは、既成政党(キリスト教民主主義政党や社会党)では、憲法改正に必要な多数派を形成できず、それを補う形で地域主義政党を取り込んで連邦化を進めていった。ワロンとフランデレンの意見はそれによって乖離し、それぞれの(相反する)要求を同時に実現するような形でしか合意形成ができなかった。それゆえに地理的な区分である3つの「地域」政府(ワロンが要求していた経済政策の自治を有する)、教育・文化政策の権限を有する、言語による区分である「共同体」政府(フランデレンが要求していた)の二種類(6つの地方政府)ができあがった。ベルギー連邦制が複雑になったのは、まさにこの80年、88年の既成政党の支持凋落、地域主義政党の台頭により、多数派形成が困難になったためであった。 そして、これだけ多くの構成体が出来上がったことは、その後の政策決定過程を複雑化し、それが2007年以降の分裂危機(長期の政治空白)の一因となっていると考えられる。 なお、この調査の過程で、ベルギーの連立形成における国王の役割の重要性を改めて知ることができた。我々が通常考えるよりも、かなり国王の意向が反映される。最終年度は、まず国王を中心とした政治史をコンパクトにまとめ、それと同時に分析枠組みにそって、いわゆる連立モデル自体を見直すことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史資料の読解が大変興味深く、特にベルギーの場合国王が連立形成に果たす役割が大きいことを見いだした。そのため、従来の連立形成モデルにあてはめてベルギーを説明しようとするよりも、ベルギーの特殊性を明確にして、従来のモデルを精緻化する方向での貢献もありうると考えたゆえ、スピードは「おおむね順調」ではあるが、方向性が「当初の予定」から少しずれる可能性もある。ただし、今回得られる知見は、ベルギー政治史研究においても、極めて興味深いものになるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、国王を中心としたベルギー政治史を簡潔にまとめることを優先したい(本年秋に刊行予定)。 また、本年5月末にベルギーでは4年ぶりの総選挙が行われる。結果次第では、また連立形成が長引き、結論をまとめにくい状況になるかもしれない。また夏に資料調査が必要になるかもしれないが、その中間報告を含めて、なぜこのような複雑で「逆説的な」連邦制を作り出したかを、連立モデルを国王ー主要政党関係という視点から見直しつつ、年度内に成果をまとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本来、この差額は書籍費に充てる予定であったが、調査の過程で国王の役割に注目し、かなりの本が互い学の図書館の相互貸借でまかなえたため。また、昨年7月に前国王が退位し、新国王が即位した。本年5月に行われる総選挙は、ベルギーにとっても、新国王にとっても大きな試金石になると考え、選挙期間ないし選挙後の夏期休暇に現地資料を集めたく、その旅費として用いたかったため。 おそくとも8月には現地へ出向き、選挙後の状況を、新聞や現地研究者へのインタビューを通じて調査することに用いたい。また、連立形成モデルの見直しについて必要な最新の文献があれば、それを購入する。
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Research Products
(3 results)