2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24530145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
増原 綾子 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (70422425)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 政軍関係 / インドネシア |
Research Abstract |
1.ポスト・スハルト期の国防政策について、インドネシアで2003年と2008年に出された国防白書を中心に分析を行った。本研究課題の「研究の目的」でも述べた通り、2002年国防法と2004年国軍法の成立以降、同国の政軍関係は新たな展開を見せているが、その一つは国防白書の発行である。白書の発行によって同国の防衛政策は広く国内外に示されることとなったが、その白書の内容を明らかにし、同時にそれ以前の脅威認識や防衛政策を合わせて分析することで、独立以降現在までの国防政策の変遷を説明した。この研究は、昨年8~10月にかけて行った資料分析と現地調査に基づき、「ポスト・スハルト期のインドネシアにおける国防政策――国防白書の分析を通じて」とのタイトルの論文として『アジア研究所紀要』第39号(2013年2月)に掲載された。 2.インドネシアの政軍関係について、上で述べた防衛政策の変遷を議論に組み込みながら、通史的に、同時にポスト・スハルト期に特に焦点をあてて明らかにした。実際にポスト・スハルト期とそれ以前でインドネシアを取り巻く国際環境やその脅威認識は大きく変わったにもかかわらず、国防政策に大きな変化は生じていない。しかしながら、今後、インドネシアの政軍関係はむしろ国防政策の在り方をめぐって変わっていく可能性があり、政治と軍の関係性を規定する制度の構築・改革としての政軍関係を議論するのみならず、security sectorとしての軍の役割と防衛政策をめぐる枠組みの中で政軍関係を議論していく必要性があろう。この議論は、千葉大の酒井啓子教授を中心とする科研費プロジェクト「現代中東・アジア諸国の体制維持における軍の役割」の研究会で「インドネシア政軍関係の変遷」と題して、2013年2月に報告を行ったものであるが、同時に本研究課題とも大きく関わっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集や現地調査の進捗状況から平成25年度の研究計画の一部(国防政策の分析)を先に行い、平成24年度に行うことになっていた法律の立案過程及び政策の決定過程については平成25年度に行うこととした。順序は入れ替わったが、本研究課題にとって必要な研究はおおむね順調に進められている。また、議会関連資料の本格的な読み込みを始める前に、近年に出版されたものも含めて全体的な先行研究のレビューを行うことは必要な作業であり、それが平成24年度中に完了したことも、本研究課題にとっては重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(今年度)は、以下の2つの研究を進めていく。 1.2002年国防法、2004年国軍法という2つの法律の法案成立過程について、議事録等を参照しながら分析する。特に、政軍関係やSecurity Sector Reformを研究する専門家グループ・研究機関・NGOなどの立法への関与と、彼らと両法案の成立に携わった国会議員や軍関係者との交渉について注目したい。議会を中心とした意思決定のあり方を分析する。 2.2013年は2003年以来5年ごとに公刊されてきた国防白書が出る年でもある。以前の国防白書と今年の国防白書を比較分析しながら、近年のインドネシアの脅威認識や防衛政策を再考する。政策決定過程に注目した研究を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成26年度(次年度)は、政軍関係と紛争というテーマで研究を行う。政府や議会による軍の統制の可否が地方における分離独立運動や民族・異教徒間の紛争のあり方にどのような影響を及ぼしたかを研究する。現在までのところ、東ティモールとアチェが主要な分析対象となっているが、これらを含めてポスト・スハルト期に起こったインドネシアの紛争を広く視野に入れて、紛争前の予防的段階から紛争の発生・拡大局面、紛争の収束局面における軍と政府内の諸アクターの動きを分析したい。 研究費は主に関連図書・資料の収集や現地調査に使われる。本研究課題の研究経費・設備備品費の明細・旅費の明細に示した通りであり、変更はない。
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Research Products
(2 results)