2014 Fiscal Year Research-status Report
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24530145
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
増原 綾子 亜細亜大学, 国際関係学部, 准教授 (70422425)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インドネシア政治 / 政軍関係 / 民主化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は紛争をめぐる政軍関係の研究の一環として東ティモールにおける調査を2015年3月に行った。1999年のインドネシアからの独立の是非を問う住民投票の実施前に起こった虐殺事件の現場となったリキサ、マウバラといった東ティモール西部地域の町や村を訪れて、現地住民に虐殺事件当時の詳細な過程と彼らの行動などについてインタビューしたほか、インドネシア併合時代の1991年に首都ディリで起こったサンタクルス墓地虐殺事件の現場を訪れて、インドネシア軍による発砲がどのように起こったのかを現地住民に話を聞いた。合わせて現在の東ティモールの復興状況についても視察及びインタビュー調査を行った。また、1999年住民投票当時、インドネシアから監視団の一人として派遣されていたインドネシア大学教員にもジャカルタでインタビューを行い、住民投票当時の首都ディリの様子を聞いた。インタビュー調査とともに、インドネシアと東ティモール両国の国軍間の関係改善の過程について東ティモール政府の関係者がまとめた書籍など東ティモール紛争関連の文献資料を収集した。 そのほか、2014年はインドネシアにおいて4月に議会選挙と7月に大統領選挙に行われた。この二つの選挙に関連したデータや資料の収集・分析を行い、日本インドネシアNGOネットワーク(JANNI)、イスラーム地域研究民主化班の研究会、国際情勢研究所・東南アジア研究会で分析の成果を発表した。これらの選挙に軍がどのように関わったかについても、上述の研究会などで発表し、JANNIのニュースレターにも掲載した。 また、拙著『スハルト体制のインドネシア――個人支配の変容と一九九八年政変』(東京大学出版会、2010年)の英訳版図書であるThe End of Personal Rule in Indonesiaを京都大学学術出版会より出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展しており、民主化過程のインドネシアにおける政軍関係を、①法制度面で、②国防環境・国防政策面で、③紛争とその解決の面で、の三つの方向性から分析するという本研究の課題は当初の予定に沿って進みつつある。①についてはほぼ完了しつつあり、②についてもかなりの部分終わっているが、最終年度である今年度も引き続き継続して研究の成果をまとめたい。③についてはまだ検討すべき問題が数多く残っており、引き続き今年度のメインのテーマとして研究を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は再びインドネシアの国防政策の観点から政軍関係の変化を探ることにしたい。夏休みに南シナ海の最南端に位置するナトゥナ諸島を訪れ、住民が中国から軍事上の脅威を実際にどのように感じているのかなどについてインタビュー調査を行う予定である。合わせて国防に関する国軍の認識や政策に関する資料・文献などを収集する。 紛争面についてはこれまで集めたデータや文献資料などをいま一度整理し、分析を進めた上で議論の方向性を組み立て直し、今後どのような調査が必要となってくるのか、長期休暇中に行う現地調査において何をどのように行うのかを検討する。 上のような分析・検討に基づいて政軍関係に関する論文を2本程度執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は以下の理由である。2014年は4月にインドネシア議会選挙、7月にインドネシア大統領選挙があり、それらの選挙の分析と分析結果の報告に研究時間が割かれたこと、また学術成果公開促進費に基づく著書(和書)の英訳図書刊行のための校正及び編集関連の作業量がかなり多く、夏休み期間である8月から9月にかけて集中して行ったことで、8月に予定していた海外出張に行くことができなかった。また、3月の海外出張(インドネシアと東ティモール)の旅費の大部分を千葉大学の酒井啓子が研究代表者を務める基盤研究A(アジア・中東諸国の政治体制における軍の役割)の分担金でまかなった。この基盤研究Aは政軍関係を主に扱うものであり、本基盤研究Cのテーマと大きく関係している。 以上のような理由で未使用額が生じたことで、科研費の1年間の期間延長を申請し、受理された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に夏休みにインドネシアでの現地調査と資料収集を行うための旅費および文献資料の収集・購入費用に充てる。その他、制度、紛争、国防政策関連の比較政治学系の書籍及びインドネシア・東南アジア関連書籍の購入に充てたい。インドネシアでの現地調査は、できれば南シナ海に浮かぶナトゥナ諸島の視察として行うことを予定している。ナトゥナ諸島に軍事上の脅威が実際にどのようにあるのかを観察し、住民にインタビューを行いたい。何らかの理由でナトゥナ諸島に入ることができなくなった場合には、昨年度の東ティモールでの調査の継続として、今度は西ティモールで調査を行うことも検討している。西ティモールは東ティモール併合派の民兵が数多く住んでおり、また1999年住民投票時に東ティモールの人々が数多く西ティモールに逃れ、キャンプ生活を行っていた地域である。
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Research Products
(8 results)