2013 Fiscal Year Research-status Report
日本と欧米諸国の基礎的自治体における住民参加に関する制度と実際についての比較研究
Project/Area Number |
24530150
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 三彦 東海大学, 政治経済学部, 教授 (50341011)
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Keywords | 政治学 / 行政学 / 地方自治 / 住民参加 / 比較研究 |
Research Abstract |
本年度(平成25年度)は研究計画3ヵ年の2年目にあたり、昨年度(平成24年度)に引き続き、1.住民参加に関する先行研究の整理と、2.欧米諸国の基礎的自治体において現地調査を実施した。 まず、1.先行研究の整理では、本年度は、とくに住民参加と市民教育(シティズンシップ教育)との関係について研究した。住民の政治への参加や行政への参加を制度化したとしても、住民が自ら判断して参加する能力がなければ、形式的な参加にすぎなくなり、このような場合、かえって政治権力、行政権力を有する側にとって都合の良いように利用される可能性がある。そのために、住民の側には、自ら主体的に参加し、自らの判断できるだけの政治リテラシーが求められる。このような参加の課題について、先行研究にあたり、これまでの議論について考察した。 次に、2.現地調査の実施では、アメリカのサンフランシスコ市とスイスのチューリヒ市で自治体関係者にインタビューを行った。サンフランシスコ市は、住民、とくに若者の政治参加を促すために学校教育においてのみならず、選挙の際の投票立会人等のボランティアを募集するなどして、現実の政治を経験させることを行っている。また、チューリヒ市の場合は、学校教育における政治リテラシーよりも、頻繁に実施される住民投票や選挙によって有権者のみならず、選挙権を有していない若者も、政治に対する関心を高めることにつながっているということが明らかになった。 さらに、先行研究と現地調査で得られた知見を、本研究の課題である「基礎的自治体における住民参加に関する制度と実際」の解明に活かすための研究方法についても検討した。 こうした研究は、今後、各自治体の住民参加、とくにここ住民投票などの政治参加の実際について明らかにし、住民参加と市民教育の関係について解明する際の基礎になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間の研究期間で、住民参加制度の実際について明らかにするとともに、「能動的な市民」に必要な「政治的素養」を育成する「市民教育」に関する各国の方策について明らかにし、そこから自治体における住民の政治参加制度と「市民教育」の関係性について解明することを目的としている。そのために、本研究の2年目にあたる平成25年度は、平成24年度に引き続き、住民参加に関する先行研究を整理し、欧米諸国の基礎的自治体において現地調査を実施した。 まず、先行研究の整理では、とくに住民参加の制度と市民教育との関係について整理した。すでに指摘されているとおり、デモクラシーにとって住民・有権者の参加は不可欠であることから、住民参加を制度化することが求められる。その一方で、参加を制度化するだけでは、住民が政治に主体的に参加し、自ら判断しなければ、参加は形式的なものにすぎなくなる。そのために必要な政治リテラシーについて、これまでの議論から考察した。 また、現地調査では、日本と欧米諸国の基礎的自治体における住民参加の実際を探るため、引き続き現地において調査を実施した。とくに本年度にはアメリカのサンフランシスコ市においても現地調査を実施した。これにより、昨年度のヨーロッパ諸国での現地調査に続いて、アメリカにおいても自治体関係者にインタビューを実施した。サンフランシスコ市は、全米の中でも住民投票をはじめとして住民参加が活発な都市であり、実例も多い。住民参加が制度化されているだけでなく実際に活用されている点で、スイスの自治体などと類似していることが改めて確認できた。なお、当初、インタビューに加えて、アンケート調査の実施も視野に入れていたが、自治体によって協力的なところとそうでないところがあり、回答数に大きな差が起こりうること等が考えられることから、本研究では、インタビューに重点をおいて調査することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究計画の最終年にあたるため、平成24年度、25年度に得られたデータ、知見をもとに、さらに不足しているところを補充しつつ、研究成果をまとめていきたいと考えている。 まず、2年間の研究で得られたデータ等を整理し、それらの適否を確認するために、日本と欧米諸国の自治体関係者に対して再度インタビュー調査を実施し、これまでの調査で得られた結果について意見を述べてもらう。加えて、今後の住民参加のあり方、「市民教育」との関係と課題等についても質問する予定である。 次に、日欧米諸国の自治体における住民参加の制度と実際について比較研究を行い、どのような要因が住民参加の活性化に関係しているのか、それぞれの因果関係を検討する。これまでの研究からは、住民参加が制度化されて「市民教育」が充実しているところでは、住民参加も活発であると考えられるが、そのことの適否についても検討する。加えて、本研究で得られたデータから、住民参加に関する全般的な傾向について考察していきたい。 本研究は、住民参加制度の実際について明らかにするとともに、「市民教育」に関する各国の方策について明らかにし、自治体における住民の政治参加制度と「市民教育」の関係性を解明することを目指している。そのうえで、最終的には、住民参加、とくに住民投票などの政治参加の制度とその実際、政治的社会化との関係、さらに「市民教育」の意義について国際比較を通じて検証することによって、本研究の独創性を示せるようにしていきたいと考えている。
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