2014 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策決定における公共空間-日・カナダ・アメリカの政策ネットワーク
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24530154
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Research Institution | Kaetsu University |
Principal Investigator |
安田 利枝 嘉悦大学, 経営経済学部, 教授 (50230230)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子力政策 / 住民投票 / 公聴会 / 原子力関連裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本においては、「科学的認識をめぐる専門家の合意形成」と「総合的政策判断をめぐる社会的合意形成」の明確な区別がなされず、その上、科学的検討の場が「審議会」という形で政策決定の中枢部に埋め込まれて自律性をもってこなかった(舩橋晴俊の指摘)。安全審査や安全規制の形骸化、空洞化が蔓延し、その上、一般的に言えば、電源三法や聞き置くだけの公聴会によって、社会的合意形成であるはずの事柄が「承認の調達」に矮小化されてきた。 こうした原子力政策決定過程を詳細な事実を積み上げて検証できる諸事実がようやく出揃いつつある。それは、原子力政策決定過程(政治献金など裏側の仕組みを含めて)を解明しようとするジャーナリストによる調査報道の蓄積と、他方で(決定を覆す可能性を秘めた)最後に残された裁判という公的議論の場で何が議論されてきたのかを克明に追求できる福島原発設置反対運動裁判資料、伊方原発設置反対運動裁判資料などの刊行である。これらの公開された資料の収集に力を注いだ。日本のエネルギー政策における「政策独占」の度合いと政策独占が生まれるメカニズムを上記資料等を読み込むことで検討、整理しつつある。 政策決定における手続き上民意を組み込む諸制度が実際にどのような機能を果たしてきたのか、政策ネットワークを形成している諸主体がどのようにこれを活用してきたのか、特に決定権限をもつ側がどのような政策信念をもち、どのように住民の意見表明や行動に対応してきたのかを解明できると考えている。 アメリカ合衆国との比較においても、レファレンダムとイニシャチブという住民投票制度を中心として、公聴会のあり方(アメリカでは裁判における審理に似た形式で進行する)、原子力発電にかかわる裁判と判例などから、住民、公衆の政策決定への参加にかかわる各主体の政策信念と対応を探る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗状況が思わしくない主たる理由は、時間的制約である。学部長職並びに常任理事職に就き日本高等教育評価機構による評価の受審、大学内学部再編問題その他の学内行政の処理、調整に時間を費やすことが多くなったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した資料を、原子力発電所をめぐる様々な住民運動、あるいは法制度上確保された「公的空間」についての運動側の戦略的位置づけが、政策決定の権限を握る政策ネットワークにどのような影響を与えたのか、どのような対応を引き出し、政策決定過程をどのように変容させたのか、させなかったのかに焦点を宛てて読み込み、整理することに集中する予定である。
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Causes of Carryover |
所属大学が高等教育評価機構による評価を受審するなどの学内行政業務を優先したため、計画通りの研究出張を行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
約20年間に及ぶ裁判資料を編集、解題、解説した『伊方原発設置反対運動裁判資料』全7巻を入手すること、アメリカのバーモント州バーモント・ヤンキー原発をめぐる連邦政府対バーモント州の裁判資料を入手することに用いたい。また、夏期休暇を利用して、ヤンキー原発をめぐる各種公聴会や裁判に係わり続けた団体を取材し、アメリカにおける公聴会の実態に迫りたいと考えている。
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